【レポート】【SDGs×ものづくり】1ヶ月間でサスティナブルなプロダクト創出を目指す実践型アイデアソン「Tenkaichi(テンカイチ)」
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【レポート】【SDGs×ものづくり】1ヶ月間でサスティナブルなプロダクト創出を目指す実践型アイデアソン「Tenkaichi(テンカイチ)」

2021年9月17日(金) ものづくりに関わる高専生・技術系大学生・社会人を対象とした1ヶ月のアイデアソン「Tenkaichi(テンカイチ)」(主催:名古屋市工業研究所)の最終報告会がオンラインで開催されました。

Tenkaichi とは

愛知県内の優れた技術を保有する企業と、ものづくりに関わる若い世代が協力して、SDGsをテーマに「2030年で当たり前のモノ」を1ヶ月で作ってみようという試みです。
東海圏の地域産業をバックアップしている名古屋市工業研究所が主催しており、参加者はプログラムの期間中に同研究所が運営するNagoya Musubu Tech Labの設備を使って、プロトタイプの作成に挑戦することもできます。

イベント詳細:https://tenkaichi-1.peatix.com/

コンセプト 「ものづくりは、問いづくり。」

最終報告会までの1ヶ月の間、参加者はこのプログラムに参加する愛知県内の企業から提示された課題に対して、提供された技術シーズを用いて取り組みました。新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、Tenkaichi開催期間中はチームと企業がSlack上で進捗を共有し、リモートワークを基本としてプロダクトの製作を進めていきました。

課題提供企業は以下の3社です。

株式会社FUJI電子部品実装ロボット、工作機械を製造
小島プレス工業株式会社トヨタ自動車(株)の協力企業。自動車の内外装部品を製造
株式会社河合電器製作所
工業用電気ヒーターを製造

個性豊かな4チームの成果発表

いよいよプレゼンテーションがスタートしました。各チーム制限時間は10分。

チームD(縁情) ※(カッコ内)はチーム名
テーマ:『つながり』を創造する熱デバイスの開発
課題提供企業:河合電器製作所

チームD_発表1

チームDのコンセプトは「遠距離恋愛(会えない恋愛)に使うデバイス」で、プロダクト名は「コアリー」です。河合電器製作所のシリコンラバーヒーターを使用し、デバイスを装着したぬいぐるみを抱きしめることで、抱きしめた熱がヒーターに伝わり、離れた場所にいる恋人同士が双方向でお互いの熱を想いとして伝え合うことができるというものです。

開発チームメンバーの1人が過去に体験した遠距離恋愛の経験をもとに開発されたこのデバイス、デモ動画では本物の恋人も登場し、リアルな実体験を反映させたかなりユニークなアイデアのプロダクトでした。フィードバックでは、審査員も自分の恋愛経験を交えてコメントするなど、トップバッターから大いに盛り上がりました。

「会う回数が減ることでリアルな体感は失われていく、バーチャルなどの技術は発展していても、体温を感じられるようなものはまだ無かった」ということがこのデバイスを作ろうと思ったきっかけとのことでした。実際にこのデバイスを使いたいかどうかのアンケートを遠距離恋愛中のカップルに対して実施したところ、70%が「欲しい」と回答したとのことです。

チームD_発表2

フィードバックでは、「遠距離恋愛のカップルだけでなく、今回のコロナのように会えないという状況によってオンラインが増えてくると、家族や友達同士でも需要が増えてくるのではないか」というマーケットの動きを更に先まで予想した商品展開についてもコメントが及びました。一般向け商品として実現可能なところまで考えを落とし込んでいく審査員とのやり取りが、更にプロダクトへの考えを深める経験になっている様子がうかがえました。

チームA(Six pieces)
テーマ―: FPM-Trinityシステムを使って作る「知育玩具」
課題提供企業:株式会社FUJI

チームA_発表1

チームAは「知育によって未来を変える」をテーマに掲げ、SDGsの観点から「優しい人になってほしい」というコンセプトの「Hearton(ハートン)」という知育道具を開発しました。コンセプトである『優しさ』とは何か?ということを深く議論した上で、「多様な反応を自然に認めあえるようになるにはどのような仕掛けが必要か?」ということをプロダクトに反映していったそうです。

開発にはFUJIの「FPM-Trinity」という3Dプリンターが使用されました。回路やセンサーを中に組み込んだ状態で造形できる特徴を活かし、接し方で反応が変わる球体と立方体の玩具を作成しました。

子供がHeartonに話しかけたり振ったりなどの接し方をすることによって、中のセンサーが光ったり音をだしたりと、それぞれの接し方に応じた違う反応が表れるような仕組みになっています。子供は扱い方によって反応が変わるHeartonに触れ合っていくことで、他者に対しての想像力や思いやり、多様性に対する理解を育んでいくことができます。

チームA_発表2

また、外観のカスタムも可能で、利用者の個性を表現することもできます。
将来はアプリで制御したりアップデートを可能にしたりと、知育玩具というだけでなく、発達障害などの医療にも活用できるのではないかと考えているということでした。

発表後のフィードバックでは、まず「Hearton(ハートン)」というネーミングが非常に高く評価されていました。また、3Dプリンターだと様々な形が作れますが、それぞれの子供の接し方やカスタムで多様性が育つことを表現するために、あえて単純な球体や立方体にしたという話も印象的でした。
製作を見守ってきた提供企業のFUJIの担当者の方も、優しさをプロダクトに反映するという難しいテーマに対してチームAが挑んだこの経験は、必ず今後に活かせると力強く語っていました。

チームC(アイがいっぱい(Mもいるよ))
テーマ:モビリティの新たな利用価値創出につながるプロダクト
課題提供企業 : 小島プレス工業株式会社

チームC_発表1

チームCは「2030年のモビリティ」をテーマに、近未来のモビリティを想像し未来に活かす提案をするという課題でプロダクトを発表しました。

プロトタイプとして製作するにはハードルが高い「モビリティ(自動車)」というものに対して、一体どんな答えをだしてくるのか、審査員たちも高い関心があったようです。

まずは、前提の知識として、現在モビリティ技術が実現しようとしている「CASE(ケース)」という概念について説明がありました。

しかし、チームCの考察では、「2030年は5Gで自動運転が発達するものの、実際は思ったより発達しないのではないか?」というものでした。なぜなら、10年間で全ての既存の車両が高価なコネクテッド機能を搭載した自動運転車に買い替えられ、全ての人が運転する楽しさを手放すとは限らないからだと言います。自動運転を含むモビリティと、それを運転するドライバーの運転により、曖昧な運転や危険な運転で新たなトラブルも増加し、自動車社会は混沌とする可能性があるのではないかと述べられました。それを解消するために、モビリティ同士の「シンプルで豊富な意思疎通」が必要になる、というのがチームCの導きだした開発コンセプトです。

チームCのプロダクト情報は、知的財産権の都合上、多くの部分を記載することができませんが、その開発コンセプトをもとに作られたプロダクトは、モビリティ同士の「豊富な意思疎通」を手助けするモビリティに搭載する通信システムという形に落ち着きました。

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このシステムをモビリティ同士が使用することによって、運転初心者が車線変更をスムーズに行えたり、社会的に大きな問題となった煽り運転を撲滅することにも効果が期待されたりと、安全で快適な2030年の車社会の実現に貢献できると考えられます。

フィードバックでは、検証の仕方について評価が高かったことに加え、このシステムを社会へどのように普及させていくのかについての議論が交わされました。良いプロダクトやサービスを作る際、どのように社会に実装させていくのかということまで考えておくことが重要というコメントは、全ての参加者にとって今後の開発の際に大きな意味を持つものになるのではないかと思いました。

チームB(Spicy Boys)
テーマ: FPM-Trinityシステムを使って作る「SDGsに則ったPCやスマホと連携できるガジェット
課題提供企業 : 株式会社FUJI

チームB_発表1

チームBが製作したプロダクトは、耳にかけるデバイス「My Doctor EAR(マイドクターイヤー)」です。

チームBが想定した2030年の未来では、特に医療分野においてAIが大きく貢献しているとのことでした。それを実現するために多くの生体情報を集められるスマートデバイスの開発が必要だと考え、今回のプロダクトは開発されました。

こちらもチームAと同じく、FUJIの3Dプリンターである「FPM-Trinity」で作成されました。耳にかけるという仕様から製品を小さく作る必要がありましたが、回路を立体的に細かく組み込むことができるというFPM-Trinityの特徴を活かし、小型のプロダクト作成に成功しました。

このデバイスを耳にかけて装着することにより、体内の多様なデータが計測され、そのデータをBluetoothで送受信することによって、アプリやWebページで計測データを閲覧することができます。

チームB_発表2

また、計測したデータをクラウドにアップしAIの解析でローカル地域の情報などを表示することにより、周辺の感染リスクを予測するというような事も可能です。まさに、コロナ禍で必要とされたデータの活用方法がここに取り入れられていました。

フィードバックでは、クラウドでの個人データの管理について、個人情報保護の観点から規制や法律についても考えておく必要があるというアドバイスがありました。また、このプロダクトの貢献領域として、都度、看護師の方々が行っている検温などのバイタルデータの測定の業務において、現場の測定の負担がかなり軽減されるのではないかというコメントもありました。これもまた、コロナ対応で逼迫している医療現場の現状を踏まえると、今後需要が高くなる製品であると言えるのではないでしょうか。しかし、同時に医療用として製品化すること自体はハードルが高いため、商品化する際にはそういった点を押さえて改めて開発を進める必要があるということでした。

提供企業 FUJIの担当者は、「FPM-Trinityでガジェットを作るという課題に対して、ただハードウェアを作るというゴールではなく、いかにしてより多くのデータを収集するか?というソフト面からのアプローチで製品の開発が進められた事がとても良かった」とコメントしていました。

サステナブルなものづくりの未来を目指し、共に悩み歩んだ1ヶ月を終えて

4チーム全ての発表が終了し、結果発表の前に、1ヶ月間開発を見守りアドバイスしてきた審査員からの講評がありました。

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Nexstar CEO 山本 愛優美氏:他の協賛社、他のチームとも一緒に新しいことができそう。現実的に実装に向けてもっとたくさんの議論をしていきたい。
株式会社Cuborex 代表取締役 寺嶋 瑞仁氏:今回のことがこれからの役に立つと思う。実際に実現されていくのかどうかなども楽しみ。
IDATEN Ventures Capitalist 坂本 晋悟氏:レベルが高いと感じた。スタートアップと同じくらいクオリティが高い。プロトタイプでの検証の仕方も良かった。これからはさらにビジネスモデルを意識することが大事。そして、オープンイノベーションが大事。日本はプロダクトアウトとマーケットインの両方をすることが難しいので、こういう場はとても貴重。
名古屋市工業研究所 支援総括室長 山岡
充昌:コンセプトからしっかり考えられている。今日の発表を聞いて、これまでのものづくりの概念を変えていく必要があると感じた。

そして、優勝を勝ち取ったのは・・・

いよいよ優勝チームの発表です。初代Tenkaichiは・・・

優勝発表

チームC(アイがいっぱい(Mもいるよ))
モビリティの新たな利用価値創出につながるプロダクト(課題提供企業 : 小島プレス工業株式会社)でした!

オンラインのカメラ越しにも安堵しているチームメンバーの様子が伺えます。

【優勝チームのコメント】
「どのチームもレベルが高く、選ばれたのが信じられない。」
「専門分野が違うので貢献できるか心配だったが、優勝できて本当に嬉しい。」
「フィードバックを受けて、マーケティングをどうするかなど新しい気づきや改善点がわかった。」
「普段未来を考えることはないが、今回の期間中は未来を考えてわくわくして楽しめた。」

実は中間発表までは全く別のものを考えていたそうで、変更した後の実質的な製作期間は2週間ほどになってしまったそうですが、これだけのものがちゃんと期間内に完成できたということにも驚きでした。

最後に、主催の名古屋市工業研究所 山岡氏から挨拶がありました。

主催者挨拶

「参加者の皆さんが、本当に楽しんでくれたなら良かった。参加企業にとっても新たなヒントが得られたのではないか。今回の機会を活かして、スタートアップにも挑戦してもらえればと思う。そして、スタートアップを支援するNagoya Musubu Tech Labの存在をこれからもっと広めていきたい。」

また、提供企業にとっても、自社製品の新たな活用方法を発見でき、アイデアに驚きや刺激をうけた貴重な経験が得られたようです。

【提供企業からのコメント】
河合電器製作所:学生や外部の人と何かを一緒にやれたことはとても貴重な経験だった。新しい目線やアイデアをもらったことはすごく刺激になった。
小島プレス工業:自動車という作るには難しいプロダクトに対して、学生たちが試行錯誤して取り組んで最終的には自分たちなりの答えをだしたというのが素晴らしいと思った。学生のうちにこのような経験ができることは本当に素晴らしい。
FUJI:1ヶ月はあっという間だった。もっとこんな経験を早いうちにできればいいと思った。

以上で第一回目のTenkaichiは終了です。参加チームだけでなく、企業や審査員、運営までも一緒になって作りあげた本プログラム。1ヶ月を共に走り抜けた最後の集合写真には、充実した笑顔が溢れていました。

集合写真

プログラムを終えて

今回のプログラムには、柔軟な発想から生まれる新しいアイデアと、技術的な知識を持った若い世代が、どうすればものづくりの世界に興味を持つのか、どうすれば興味をもった若者がその力を発揮することができるのか、というヒントがあったように思いました。





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