Twitterでの繋がりが町工場をパワーアップさせた!若き兄弟の奮闘はまだ始まったばかり
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Twitterでの繋がりが町工場をパワーアップさせた!若き兄弟の奮闘はまだ始まったばかり

「ものづくり企業ではたらく人たち〜ものひと〜」
シリーズ第一弾🌟

今回よりものづくり新聞記者中野のメイン企画がはじまります!
ものづくりの現場により近い方にお話を聞くこのシリーズ。どんな思いでものづくりに携わっているのか働く上でどんなことを大切にしているか、元製造業従事者としてより近い目線でインタビューします!

第一回は山形県東村山郡山辺町の有限会社ヒカルマシナリーさんです。

ヒカルマシナリーロゴ-2

お二人とも會田(あいた)さん・・・?なんとご兄弟!

6月某日、夢とロマンを乗せたフルーツライン左沢線に乗車し、向かったのは山形県東村山郡山辺町。

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東北での現地取材は初めてということで期待に胸を膨らませ、羽前山辺駅で降車します。羽前山辺の駅名標は山辺町名産のりんごがデザインされています。

駅を出て5分ほど歩くと、今回取材させていただく有限会社ヒカルマシナリーさんが見えてきました!

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名刺をいただき拝見すると、お二人とも會田(あいた)さん。取材についてやり取りさせていただいていたのはどちらの會田さんだろう・・・と一瞬考えていると「兄弟なんです」とのこと。いきなり驚きでした。

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右が兄の會田悠城さん(以下ユウキさん)、左が弟の會田郁三さん(以下イクミさん)です。
有限会社ヒカルマシナリーはお二人のご両親が創業したそうで、お二人は子どもの頃から工場が身近だったといいます。しかし、お二人ともこれまでそれぞれの道を歩みながらも、様々な思いを持ち現在家業に従事していらっしゃいます。

🗞家業であるヒカルマシナリーに入社した経緯を教えてください。

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ユウキさん「大学、大学院とバイオ化学を専攻していて、卒業後は神奈川県でグリース関連の会社に就職し、技術部に所属していました。その後、三重県に転勤し、品質保証や監査対応を担当していました。山形に戻ったのは就職してから3年目の3月頃で、父から“山形に戻ってきてくれないか?”と話があったことがきっかけです。」

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イクミさん「私もはじめは別な会社に就職したのですが、今後新しい事業を展開していくにあたって協力して欲しいと父から話がありました。前職も製造関係でしたが分野が異なっていたので、お付き合いのある工場で1年半程修行してから入社しました。」

🗞以前から家業を継ごうという思いはあったのでしょうか?

ユウキさん「就職した当時は意識していませんでした。関東で暮らしていくつもりでいましたが、途中で会社の研修体制が変わり、転勤することになった時に漠然と将来について考えることはありましたね。そんなタイミングで父から戻ってきて欲しいと言われ、山形に帰って家業に入ることを決断しました。」

🗞それまでの仕事と家業とでは仕事内容が異なると思うのですが、戸惑いなどはありませんでしたか?

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ユウキさん「以前から時々、補助金関連の申請書の作成などを手伝っていたり、前職での経験を活かせる場面もあったので、そこまで戸惑いはありませんでしたね。とはいえ家業を継ぐことを意識したことはなかったので、覚えることは数多くありました。」

イクミさん「小さい頃から見ていたので、機械を操作することへの興味はありました。はじめは深く考えずに取り組んでいた部分もあったのですが、実際プログラムを組んで加工してみると面白くて、そこから切削加工に魅了されました。」

🗞なるほど。子どもの頃から家業は身近ではありつつも、仕事としては新たな挑戦だったのですね。

ユウキさん「そうですね。学校帰りに切り粉を掃除したりしていて身近ではありましたが、まさか自分も家業に携わるようになるとは思わなかったです。笑」

自分たちにできることをひとつずつ

🗞現在の仕事内容を教えてください。

ユウキさん「私がメインでやっているのが品質保証の分野です。これまで手付かずでしたが、先々月JIS Q 9100を取得(編集部注:航空宇宙産業における品質マネジメントシステム)することができました。現在はここがひと段落ついたので、最近は現場を手伝ったり、ホームページの制作にも着手しています。これまでできていなかった集客やSEO対策も勉強しながら取り組んでいます。」

イクミさん「私は現場での製造と、Twitterの運営を担当をしています。切削加工に従事するようになって、その面白さと奥深さを日々感じます。Twitterでは試作として作った製品を投稿すると、フォロワーの方からコメントをいただけるようになってきました。そのやりとりから新たな製品や製造へのヒントをいただけることもあり、製造もTwitter運営も両方とも魅力的に感じています。」

🗞広報活動もされていたり、通販サイトBASEで一般向けに販売も行われていますよね。これはどなたの発案だったのでしょうか?

ユウキさん「発案は私なんですが、実は一般の方々向けに販売するようになったきっかけは、弟がTwitterで投稿したツイートだったんです。2020年夏に山形県で豪雨災害があったのですが、ヒカルマシナリーがある山辺町も被害があり、工場が浸水してしまったんです。幸い多少の被害で済んだものの、工場前の道路は水浸しになっていました。その様子を動画に撮って投稿したところ、全国から励ましのメッセージをいただいたんです。それがすごくありがたくて、何かお返しはできないかと思い、一般の方々向けにチャリティグッズを制作販売し、収益は全て県に寄付させていただきました。それが一般向けに販売するようになったきっかけです。」


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*チャリティグッズとして制作した製品

🗞なるほど。被害が少なくて何よりですが、Twitterだからこそいただけた励ましのメッセージですよね。

ユウキさん「弟が入社して2日目くらいの出来事で、仕事するよりも泥を片付けなければならず、そんな時に励ましの言葉をいただき、勇気をもらいましたその気持ちを何か還元できたらと思ったんです。普段からお付き合いのある近くの彫刻屋さんにも協力していただき製作し、想像以上の方々に購入していただきました。」

イクミさん「心配や励ましの言葉をすごくいただいて、驚きながらも嬉しかったんです。それを機にTwitter活動も本格的に始めました。」

🗞その出来事をきっかけに、一般の方々向けに商品を届けたり、Twitterで情報発信していこうとスタートされたのですね。

ユウキさん「普段弊社が製造している製品は機械の中に入る部品が多いので、一般の方々の目に触れることはあまりないんです。でも、こうして一般向けの製品を作ったことで、モチベーションも上がり、これまでは意識しなかった部分を意識するようになって会社としてもプラスでした。」

🗞これまで意識しなかった部分というのは例えばどんなところですか?

ユウキさん「機械の中に組み込む部品は精度がとても重要ですが、比べてインテリアや飾りとして楽しむ製品はそこまでの精度は求められていません。しかしその分、見た目が重要です。製品が傷つかないように固定の仕方を工夫するなど、これまでにはなかった試行錯誤もありました。」

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🗞なるほど。チャリティーとして役立っただけではなく、作ることによって社内で変化が起こったのですね。

ユウキさん「あと個人的には、友人などに転職で工場に勤めることを話すと、”もったいない”と言われることがありました。理由は様々あると思うのですが、私としてはちょっとモヤっとしていたんです。だからこそ、技術を目に見える形で世に出すことで、いろんな方々に知っていただけるのではないかと考えました。小さな町工場が、こういった製品を作り販売することで、町工場や工場に対する考え方もちょっとは変わるかなと期待も込めています。」

🗞実際に反応などはありましたか?

ユウキさん「Twitterで製品のことを投稿すると、”他にこんなものはできないですか?”と声をかけていただくようになってきました。そういった繋がりから生まれた製品もあります。他にもふるさと納税の返礼品に登録させていただいたり、県の展示スペースに展示させていただいたりと、色々な繋がりを感じています。」

*Twitterでの交流から誕生した製品

🗞Twitterでの交流がきっかけで製品が生まれたり、アイデアをもらうというのは夢がありますね。

面白そうなことにチャレンジできる環境 

🗞普段どのように情報収集していますか?

ユウキさん「Twitterでアイデアをいただいたり、交流することで情報を集めることが多いですね。Twitter担当は弟なので、情報収集してまとめてもらいつつ私もチェックしています。」

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イクミさん「他にも、兄と外食に行ったついでにその内容を投稿するんですが、そんな時も店内に店長さんの趣味で置いてある飾りを見て、これをうちで作るとしたらどういう作ろうかと考えたりします。」

🗞これまでTwitterを活用されたり、社外にPRすることはなかったと思うのですが、社員の皆さんの反応はいかがですか?

ユウキさん「これまでやってこなかった加工も含めて、楽しんでいただいていると思います。実はBASEで販売している印鑑立ては、社員の奥様が銀行員をされていて、こんなものは作れないか?という声から生まれたものなんです。少人数なので団結しながら取り組んでいます。」

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🗞お父様やお母様の反応はどうでしたか?

ユウキさん「面白そうだからやってみようと言ってもらえています。元々自分たちで創業したのも、“面白いものを作りたい。自分たちにしか作れないものを作りたい”という思いがきっかけだったそうなので、理解があり、チャレンジさせてもらっています。」

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*お母様が設計図を書き、お父様が夜中に手がけたというミステリーサークル。話題のためではなく、面白そうという好奇心からチャレンジしたのだとか。

感じたギャップを大切に

🗞職人さんとはどんな会話で盛り上がりますか?

イクミさん「プライベートな話だと行く店なども違うのであまり共通点はないんですが、趣味のラーメンの話では結構盛り上がりますね。笑」

🗞山形でラーメンの話題は鉄板ですよね。笑 ユウキさんは職人さんとの会話で感じることなどありますか?

ユウキさん「私は前職が製造業ではなかったので、製造業の専門用語に戸惑った記憶があります。例えば銅などの比較的柔らかい素材に対して“ねばる”という言葉を使っていて。初めて聞いたときは、金属なら全部硬いんじゃないの?と思いました。笑 あと、私は見た目やデザイン性も気になりますが、製造業ではどれだけ早く正確に加工できるのかを重視していて、些細なことですがギャップを感じることもありました。」

🗞金属が粘るというのは確かになかなか馴染みのない表現ですよね。

ユウキさん「でも、そういったギャップを感じることができるというのも貴重な経験だと感じています。切り粉ひとつとっても、職人の方々は当たり前に捨てるものだと思いますが、私からすると綺麗だなと感じます。それに、私のように感じる人は結構いるんですよね。そういった方々へ向けての発信も続けていきたいと思っています。」

*ユウキさん考案のメタリウム

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 *打ち合わせスペース展示してある切り粉

🗞Twitterなどで外部へ発信していく中で課題に感じることはありますか?

ユウキさん「発信の仕方、発信する先は悩むことがあります。
例えば先ほども紹介したこのグラスはルビンの壺のように人の横顔になっていますが、とある人が結婚式に合うかもねと言ってくださったことがありました。確かに、新郎新婦の横顔がグラスで表現されていたら素敵だと私も感じます。結婚式後も自宅で使うことができますし、更に、その製作過程をムービーとして記録するとそれも作品となります。このようにどんどん膨らんでくる発想をどう伝えていくかが今後の課題です。」

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🗞面白い発想をより魅力的に伝えていく方法といったところでしょうか。

ユウキさん「面白いということをいかに伝えるかというのは、今すぐ答えが出るものではないのでこれからも探求していきたいです。

イクミさん「それと実はTwitterを本格的に運営し始めた時に、取材を受けるという目標がありまして。笑 今回その目標を達成することができて嬉しいです。」

🗞そうだったんですね!笑 こちらとしても嬉しいです。では最後に、今後お二人が目指す将来像について教えてください。

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ユウキさん「町工場や金属加工業のイメージを変えたいと思っています。そもそも剥き出しの金属製品を触る機会はあまりないと思うので、そういった方々に良さを知ってもらいです。そのために、広報や販売の工夫、ブランディングにもっと力を入れていきます。あと、地元の方々ともっとコミュニケーションを取り合って、一緒に製品を生み出したり、皆さんのアイデアを形にする手助けができたらなと思っています。」

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イクミさん「私も突き詰めると、会社や製品のことをもっと知って欲しいと思っています。Twitterをやっていて、製造業として光る存在になるには技術力だけが全てではないということに気付いたんです。伝え方ひとつでイメージも変わるというのを経験したので、今後もTwitterでの発信も注力していきたいです。」


聞きたい!

最後に、『今の自分のキーワード』を一言で表していただくコーナー!
ものづくり企業のメンバーとして働く上で、今大事にしていることや、現在の心境、目標など、今の自分の気持ちを素直に表現してもらう企画です。

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ユウキさん:色々な活動やTwitterでの繋がりが、またその先の繋がりを生み広がっていく実感や、今後も様々な繋がりを大切にしていきたいという思いが込められています。

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イクミさん:最初は気軽な気持ちで始めたとおっしゃっていましたが、やっていく内にその魅力を惹きつけられたと言います。やっぱり加工が楽しいと素敵な笑顔を見せてくださいました。


記者中野より

ユウキさん、イクミさん共に幼い頃から家業は身近であったそうですが、継ぐことのイメージはついていなかったといいます。

2019年に帝国データバンクが発表した「全国・後継者不在企業動向調査」によると、調査対象の企業27万5,000社の内、約65.2%の18万社が後継者不在であると報告しています。ヒカルマシナリーさんのような鉄鋼・金属製品を製造している企業でも58.7%と半数以上が後継者不足に悩んでいます。

今回取材させていただいたヒカルマシナリーのお二人は、加工の技術を身に付けつつ、これまでなかなか手をつけることができなかった部分を補い、事業や会社全体を更にアップデートするべく入社されました。昔から家業を意識していたわけではない分、それまで関わってきた業界とのギャップに戸惑うこともあったそうです。

しかし、ユウキさんも「ギャップを感じることも貴重な経験」とおっしゃっていたように、異業界での経験がプラスに働くように視点を変えることが大事だと感じました。それは必ずしも後継という立場だけではなく、新入社員や異業種同業種問わずに他社から転職する場合などある様々でしょう。わからないからこそ感じる根本的な疑問や、課題感は時に大事な気付きになるのかもしれません。

はじめての東北での取材でしたが、感染対策にもご協力いただきながら、充実した取材をさせていただくことができました。
引き続き、ものづくり編集部では中小製造業の皆様を中心に、“どんな人がどんな思いで取り組んでいるか”が伝わる取材をして参ります。通常の記事はDXやIoTに関わる社内での事例やソリューションを紹介し、この「ものひと」シリーズでは、より現場で働く方々の思いに迫る内容にしていく予定です。他の記事も是非ご覧ください!

ものづくり新聞では、様々な取り組みに挑戦されている製造業の会社様を取材したいと思っております。ご希望の方はぜひ編集部までご連絡ください。




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