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町工場がいま、アートイベントに挑戦する理由

ものづくり新聞

中小製造業の多くはB2B向けの製造を中心としており、原材料価格の高騰、価格転嫁の難しさ、売上減少、人材採用難などさまざまな課題を抱えています。そんな中にあっても、一般消費者向けに自社の独自ブランドを立ち上げ、自社製品を開発し販売する中小製造業が増えています。ものづくり新聞編集部は「町工場のB2Cシリーズ」としてこれまで20社以上の方々に取材を重ねてきました。(記事はこちらよりご覧ください)

今回記者の中野は、2022年5月21・22日に東京ビッグサイト西・南ホールで開催される国際的なアートイベント「デザインフェスタ」に出展を決めた方々に背景や想いをお伺いしました。

デザインフェスタへの出展を決めたのは、町工場プロダクツ Supported by MAKERS LINKの方々です。(町工場プロダクツとは、ものづくりに関わる人たちを繋ぐものづくりコミュニティ「MAKERS LINK」から派生した、自社製品の開発/発表/販売を通じ、町工場の活性を目的とした活動チームです。)

今回インタビューさせていただいた方々
有限会社宮本工業 宮本智(みやもと さとる)さん
有限会社コバ 小林巧弥(こばやし たくや)さん
株式会社三共 林万作(はやし ばんさく)さん
株式会社藤沢製本 藤澤佳織(ふじさわ かおり)さん 
株式会社ユーエス 内田公祐(うちだ こうすけ)さん

自社製品開発のきっかけ

ーーみなさん、はじめに自社製品開発に取り組んだ経緯を教えてください。

有限会社宮本工業 宮本智さん

宮本:宮本工業は主に試作板金部品を製造している会社です。本業では自動車部品の製造が多いですが、3年くらい前から先細りを懸念していました。自動車部品業界の中で食い合うように戦うのではなく、新たな分野でものづくりできないかと考え、新規開拓や新製品の開発に着手しました。コロナ禍で本業の受注が落ち込んでしまいましたが、その時間を利用して本格的に取り組むようになりました。

小林:弊社もコロナ禍で仕事が少なくなったことがきっかけです。本業は旋盤加工業で自動車や航空機業界などの部品を多品種少量生産していますが、コロナ禍で仕事が減り、空いた時間を使って何かしないといけないと考えていました。自分に何ができるだろうと思いながらSNSを見ていると、面白いことをしている町工場のみなさんを見つけました。

有限会社コバ 小林巧弥さん

ーーそれがまさに町工場プロダクツだったのですか?

小林:そうです。そこに参加したいと思い、それがきっかけで自社製品を作ることにしました。

東京インターナショナルギフト・ショー(2022年2月)へ出展した際の町工場プロダクツの皆さん

ーー林さんはいかがですか?

林:弊社は創業から約60年、鯉のぼり用のポールや伸縮アルミポールをOEMで製造してきたポールメーカーです。製品のOEM製造ですので、販売は基本的に問屋や販売店の方々に依存していました。私は8年ほど前に当時叔父が務める三共に入社したのですが、その頃世の中全体で売り方や買い方が変わってきたと感じていました。

株式会社三共 林万作さん

ーー例えばどのような変化でしょうか?

林:音楽にしてもCDが売れる時代からデータでのやり取りになり、製造業以外でもこれまでとは違う大きな変化を感じていました。そんな世の中で、基本的に販売を他社に依存している会社が20年先も生き残れるだろうかと考えたら、とても不安になりました。そこで、少しでもお客様との繋がりを作りたいと思い自社製品に取り組み始めました。

株式会社藤沢製本 藤澤佳織さん

ーー藤澤さんはいかがですか?

藤澤:本業は製本業ですが、本業の今後に対する危機感と会社の認知向上、あとはうちで働いてくれている従業員に「自分たちが作ったものが世に出る」楽しさを体験して欲しいと思い自社製品を考え始めました。決定打は2021年10月に開催された東京インターナショナル・ギフトショーに、町工場プロダクツのメンバーとして共同出展することが決まったのがきっかけで、本格的に自社ブランドや製品づくりを始めました。

ーー内田さんはいかがですか?

内田:株式会社ユーエスは刺繍加工をしている会社で、主にプロスポーツ選手や学生のスポーツチームのユニフォームにチーム名やエンブレムを刺繍しています。長年スポーツ刺繍をやっていますが、スポーツユニフォームって進化がすごいんです。伸縮性が高かったりタイトなものだったりと機能的に進化している反面、結果として刺繍しづらい方向にスポーツウェアが進化しているという現実があります。

株式会社ユーエス 内田公祐さん

ーーなるほど。素材が刺繍向きではなくなってきているのですね。

内田:そんな状況ですので、いかにコストを下げるかとか納期を早めるかみたいなことばっかり考えていて、こういう縫い方もできますよと提案しても採用されることもほとんどなく全然楽しくなかったのです。でも刺繍ってもっと楽しむものだよなと思い直したことがきっかけで自社製品開発に取り組むようになりました。

販売面の課題が大きい

ーーみなさん数年前から自社製品開発に取り組み始めたとのことですが、苦労したことなどはありますか?

宮本:ものを作るのは得意でも、自社で販売ということはそもそもやっていなかった会社がほとんどだと思います。はじめは上代(じょうだい)や下代(げだい)という流通用語がわからず、初めて展示会に出展した時に「下代っていくら?」と聞かれて、そもそも下代ってなんですかと聞き返すような状況でした。

小林:私も同じように数年前に用語を学んで取り組み始めたので、卸先も全くなかったですし、販路を見つけて開拓するのは今も一番の課題です。

ーー具体的に販路開拓のためになにかしていることはありますか?

小林:同じように自社製品の販売に取り組んでいる会社同士での情報交換が多いです。実際にここに卸したよという情報やこうすればいいのではというアイデア交換などをしています。

宮本:私の場合は町工場プロダクツ仲間の商材は全部把握していて、営業する時に一緒に売り込むこともあります。

ーーチーム一体となって取り組んでおられるのですね。

宮本:町工場プロダクツに参加している会社は基本的にマンパワーが足りていないことが多いので、自社だけでやるには限界があります。自社製品だけでなくみんなの製品を一緒に提案することで興味を持ってくれることもあります。

藤澤:逆に自分が何か新しいことをしようと考えた時に、町工場プロダクツの誰かの顔が浮かぶということもあります。一緒に取り組んでくれる会社を探すために展示会や商談会に時間をかけて足を運んだり、自社だけで抱えてしまうことなくスタートダッシュが切れるなと思います。

内田:私は町工場プロダクツに関わってまだ日が浅いですが、濃い交流ができていると感じます。みんなで一緒に何かやるのも楽しいですし、みなさん行動力があって挑戦している姿が「美しい」と思いました。

目の前で一般のお客様の反応を見たい

ーーデザインフェスタに出展するにあたって各社色々な想いを抱えていらっしゃると思いますが、どうでしょうか?

宮本:私はお客様と話がしたいというのが一番の目的です。お金を掛けて広告や宣伝を打つよりも、売れるかはわからないけど即売会に出て、もし売れたら何で買ってくれたのかを聞きたいんです。

有限会社宮本工業 「モスキュートコイルボックス」(蚊取り線香)

ーー販売が一番の目的ではないのですね。

宮本:売るよりもまずお客様の反応が見たいです。今までそういう場に出たことがなかったので、良い反応でもダメ出しでも良いので一般のお客さんの反応を求めています。

小林:私も宣伝やお客様の反応を見るという目的も持っています。また、B2B向けの展示会だとプロのバイヤーさんがいらっしゃって、認められれば契約に移るという流れなので、すぐに製品が売れるというわけではありません。デザインフェスタは展示会+即売会なので、売れたら良いなと思っています。町工場プロダクツの仲間と出会い、一緒になって取り組んでいるということが財産だと思っているので、みんなで盛り上げていきたいです。

有限会社コバ「MIKO」(高級調味料入れ)
デザフェス限定:商品ご購入でこちらのTABUチャームプレゼント。イヤリングやキーホルダーに付ける際、逆さまの豚のように見えることから、名前も「豚→TABU」にしています。

ーーみんなで盛り上げたいということも意識されているのですね。

林:うちも自社だけで何かやりたいという気持ちはあまりありません。
町工場や工場って一般の方々に対してひらかれていないと思うんです。一般の方が町工場の目の前を通りかかっても入れず、ホームセンターに行きますよね。でも、ドラッグストアのように気軽に来てもらいたいと思っています。

ーー町工場を身近に感じて欲しいということですね。

林:弊社の場合ロット数1000以上ないとやらないということはありません。町工場への入口のハードルを下げてオープンにしたいです。せっかく町工場プロダクツは何社もいるのだからちょっとした商店街のようなものになって、何か作りたい時に利用してもいいんですよ。という風にアピールしていきたいと思っています。

株式会社三共「koburi」(室内用こいのぼり)

ーー自社製品はどのように見せていきたいとお考えですか?

林:koburiはお祝いの意味合いが強いので、贈る側はどんな思いを持っているのかヒアリングしたいと思っています。デザインフェスタでは通常のkoburiとは仕様を変えて、子供の成長と共に経年変化して、傷ついたり汚れたりするのをあえて楽しむ真鍮製の製品と、鯉のぼりは男の子の節句というイメージを取っ払って、日本の節句として楽しめるようボーダレスなデザインの製品を考えています。お客様の反応を見て、贈る側の想いを知りたいです。お客様の想いにもっと細かく応えられるのであればできることはやりたいし、できないことは誰かにお願いできるなら一緒にやりたいです。

ーー藤澤さんはいかがですか?

藤澤:デザインフェスタに関して町工場プロダクツは「生き物」がテーマになっています。弊社にも「かばお」というキャラクターがいるのですが、一般の消費者さんにすごく気に入ってもらえています。それって親しみやすいからなのかなと思っていて、テーマを生き物にした理由もそこにあります。町工場って無骨でカッコいいイメージが多いと思うのですが、そこに親しみやすさをプラスしたいです。

株式会社藤沢製本「かばおのノート」

藤澤:デザインフェスタに出展するからには、私たち出展側もそこでしか味わえない体験をしたいですし、お客様にもしてほしいという想いがあります。製品ラインナップや展示で町工場を楽しめる工夫をする予定です。

ーー内田さんはいかがですか?

内田:まず今年はイベントや展示会など露出するところがあればどんどん出していこうと思っていたので手を挙げました。最近はコロナ禍でイベントがしづらい世の中ですが、弊社が仕事をさせていただいているスポーツ業界って全部イベントだったと気付いたんです。ここ2年ほどイベントに左右されてきたので、イベントってすごく重要だなと思い、自分自身も出たいと思っていました。

株式会社ユーエス「AtoZooWAPPEN」

ーーなるほど。実感されたのですね。

内田:弊社はオリジナルのアルファベット文字をワッペンにして販売しています。元々はお好みに合わせて文字を組み合わせてスタイ(よだれかけ)に刺繍するという企画で、スタイのためにオリジナルの文字を開発していたのですが、それが楽しくなってきてしまいました。笑 そこでまずはオリジナルの文字そのものをワッペンにして販売しています。これを展示して、一般の人がどうリアクションしてくれるのかはすごく気になります。やっぱり一般の方が見向きもしなかったら諦めたほうがいいのかなとも思っています。実験的な意味合いが大きいですね。

仲間と一緒に町工場を盛り上げていきたい

ーー自社製品に関して挑戦したいことや今後の目標はありますか?

宮本:今まで何度か展示会に出展してきましたが、そういった機会は年に何回もあるわけではありません。ですので、自分達で展示会や即売会のようなイベントをやってみたいと考えています。展示会に出展するのとは違い、集客に関してはガチンコ勝負でお客様が全然集まらないことも充分あり得ますが、町工場プロダクツの仲間で挑戦してみたいです。

ーー町工場プロダクツが主催となってイベントを開催するのですね。

宮本:はい。そういうイベントをやっていくのも一つの手だと思っています。あとは新しく製品開発をしていきたいです。現時点で企画しているものは10個以上あるので、どれかを形にして世に出していきたいです。

ーー小林さんはいかがですか?

小林:町工場というとやっぱり発信力があまりなくて、閉鎖的なイメージがあると思います。でも、町工場の敷居を下げて入りやすい雰囲気を作れば、それが今後の採用や事業承継にも繋がると思います。宮本さんがおっしゃったようなイベント以外にも、どこかに場所を一定期間借りて町工場プロダクツの情報発信局を作りたいと思っています。

ーー町工場プロダクツ情報発信局とはどのようなイメージですか?

小林:例えば群馬支店とか各地に作って、在庫を抱えなくても町工場の情報とサンプル品を展示して、QRコードから購入してもらうみたいなことも考えられるかなと思います。相乗効果でみんなの製品が注目されるのが嬉しいです。

林:私も同じような想いを持っています。町工場プロダクツというアイコンがあって、色んな会社が集まって活動していますが、町工場プロダクツと同じような活動をする団体がもっといっぱいできたらいいなと思っています。各地でそういう盛り上がりが起これば、町工場の間口がどんどん広がっていくと思います。

ーー自社製品に関してはいかがですか?

林:先日、株式会社三共として本業の「鯉のぼりポールの製造はやめない」という決定をしました。仮にちょっと儲からなくなっても文化を残すためにずっと作り続けると決めたので、ポールを作るための設備は残していきます。それを活用して、自社開発の事業では従業員のみなさんが作りたいものをどんどん作る、私はそれを販売するという形にシフトしていけたらいいなと考えています。みんなで技術力を上げながら、自分が本当に欲しいと思うものを作ったり、それの良いところを教えてもらって発信していきたいです。

ーー藤澤さんはいかがですか?

藤澤:色々な方々とものづくりをしていきたいと思っています。特に製品が世に出ていない企業さんと一緒に私たちの繋がりを生かして製品を作っていきたいです。良いものを作っている会社はたくさんあるんだから一緒になって楽しく作って、それが売れたら一番良いです。自社だけでは実現できないような製品の方が面白いですね。
あとは、町工場プロダクツって関西がちょっと弱いんです。私自身関西(滋賀県)のメンバーとして関西企業と一緒にものづくりをしたり、盛り上がることをしていきたいと思っています。

ーー内田さんはいかがですか?

内田:まずはワッペン販売用のディスプレイ什器を作りたいと思っています。イメージとしてはお菓子や棒付き飴を販売する時のような紙製のディスプレイです。什器にワッペンをセットして納品すればそのまま販売できますので、販売してくださる店舗が増えるのかなと思っています。
そして、別な製品のアイデアもいくつかあります。それを開発し、今後も色々な展示会に定期的に参加したいです。今私が感じている町工場プロダクツの楽しい雰囲気がもっと広まり、どんどん楽しい人が集まってくるようなチームになれば良いなと思います。

デザインフェスタ2022  町工場プロダクツ出展者一覧
有限会社宮本工業 @mykogyo
有限会社コバ @kobasenban
株式会社三共 @koburi_official
株式会社藤沢製本 @yomejirushi
株式会社ユーエス @us_uchida
側島製罐株式会社 @sobajimacan  @LWITBR1906

皆さんTwitterで情報発信をされています。是非ご覧ください。

デザインフェスタ

デザインフェスタ vol.55
場所 東京ビッグサイト 西・南ホール全館
日程 2022年5月21日・22日 11:00-19:00

町工場プロダクツ ブース情報
東京ビックサイト 西館1階
ブース番号 D-56 D-57


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