見出し画像

技術を磨いていつか土橋電気ベトナム支社を立ち上げたい 有限会社土橋電気 ファム・カイン・フィーさん

4月某日、編集部は静岡県富士宮市に本社を置く有限会社土橋電気に取材に行って参りました。天気の良い日で、富士山本宮浅間大社から見える富士山と桜が綺麗でした。

画像1
画像2

有限会社土橋電気は、自動制御システム設計、シーケンスプログラム設計、制御盤設計・製作や産業用機械配線工事を手掛ける会社です。主に医療機器組立・加工分野に強い会社です。

また、隣の富士市には「TECH ACADEMIA(テック・アカデミア)」という自社で運営されている教育施設があり、小学生向けに開催しているロボット教室のスペースとなっています。今回のインタビューはテック・アカデミアで行いました。

今回のテーマは外国人採用についてです。ベトナム出身で現在土橋電気で働いているファム・カイン・フィーさんと、システム設計部長の野村一樹さんにお話を伺いました。

父もかつて働いた日本で働きたい

画像3

ーーフィーさんは日本に来てどのくらいですか?

1年前に日本に来ました。生まれはベトナムで日本に来るまではずっとベトナムで暮らしていました。

ーーベトナムにいた頃はどんなお仕事をされていましたか?

ビルなどの建物の電気工事の仕事をしていました。

ーー現在の仕事も前職も電気に関わる仕事ですが、その分野に進みたいという思いは昔からありましたか?

私の父が機械設計の仕事をしていて、子供の頃から父が仕事をしているところをよく見ていました。自然と機械が動く仕組みや組み立てなどを面白いと思うようになり、大学では機械の自動化について学びました。ベトナムで就職する時、大学で学んできた専門分野を活かした仕事を探していましたがなかなか見つからず、電気工事の仕事に就きました。

ーーお父様の影響が大きかったのですね。日本で働きたいと思ったのはどうしてですか?

私の専門である機械の自動化(ファクトリーオートメーション)の分野では日本が一番進歩していると言われているので興味がありました。また、私の父も昔日本で働いていたことがあり、話を聞くと自分も日本で働いてみたいと思うようになりました。

画像4

ーーお父様や家族の方々は心配しているのではないでしょうか?

最初はちょっと心配していましたが、私の将来のためだからと家族みんなに応援してもらっています。

ーー土橋電気さんはどのように見つけられたのですか?

Facebookで株式会社One Terraceさんのページを見つけたことがきっかけです。外国人の募集をしている日本の会社がいくつか紹介されていて、その中から土橋電気を見つけました。

ーーいくつか会社がある中で土橋電気さんに興味を持ったのはどうしてですか?

まず、募集している仕事内容と自分の専門が同じだったというところです。また、土橋電気は社長がロボット教室などを開いていると書いてあったので、先生だから教えることが上手なのではないかと思い興味を持ちました。

新しい機械や技術との出会いを楽しむ

画像6

*作業中の社員の皆さん(一番前の席がフィーさんです)

ーー現在どのようなお仕事をされていますか?

制御盤の設計とプログラムを作っています。

ーー日本で仕事をしてみていかがですか?

日本に来て初めて見る機械や部品があり、色々な発見がありました。ベトナムにいた頃は、日本人は作業がきっちりしていて細かいことでも丁寧にして、厳しい検査をしているというイメージを持っていました。実際に日本に来てその通りだと思いましたし、想像以上だと感じました。

ーー例えばどんな作業に関してそう感じましたか?

配線の作業をする際に、ベトナムではテープを使って配線します。日本ではテープ以外にも色々な部品を使って圧着し配線します。使う部品ややり方まで違っていました。

ーー仕事は日本語で教えてもらっていたのですか?

そうです。日本語を勉強してから日本に来ましたが、難しい言葉や表現も多くて、時にはやり方を間違えてしまうこともありました。わからないときは絵や図に書いてもらっています。

ーー日本語はどのようにして勉強したのですか?

ベトナムで大学生だった頃、日本語学校に通い勉強しました。その時には既に将来日本で働いてみたいという気持ちがありました。

画像6

ーー仕事のやり方や言葉の難しさなど様々苦労されたことがあったと思いますが、フィーさんはそういった違いについてポジティブに捉えられるタイプですか?

はい。色々なことを発見するのが楽しいです。ベトナムでは出会えなかったような機械や道具、技術などにもたくさん出会えて面白いです。

ーー仕事をしていて楽しいと感じることはありますか?

自分が携わった新しい機械が完成すると達成感があります。山を登った後のような良い気持ちです。

ーー逆に大変だったことはありますか?

プログラミングや設計をするにあたって機械のことを理解できない時があり、難しく感じます。そんな時は周りの人に聞くと教えてくれます。みなさん優しいです。

日本の景色が好きに

画像7

ーー日本での生活はどうですか?慣れましたか?

日本では一人暮らしをしているので時々寂しいです。何かあった時も自分1人で解決しなければいけないので時々困ることもあります。でもそれらは私にとってチャレンジだと思っています。新しい世界の中で新しいものと出会い、自分の力を少しずつ伸ばしていくことが面白いです。

ーー日本に来てから好きになったものなどはありますか?

日本の景色が好きです。私の家から富士山が見えるので、特に春は桜と富士山が一緒に見える景色がとても綺麗です。

ーー景色を見に出かけたりすることはありますか?

以前常務がスキーに連れて行ってくれました。人生初のスキーで難しかったですが、少しだけ滑れました。雪景色もすごく綺麗で見られて嬉しかったです。あと、会社の方と一緒にサーフィンにも行きました。

ーー満喫していますね!お休みの日などは電車やバスを使って移動されていますか?

最近、日本で運転できる免許を取得したばかりです。これまでは電車やバスが多かったですが、車を買ったのでこれからは自分で運転して色々なところに行きたいと思っています。

ベトナムで土橋電気の支社を立ち上げたい

画像8

ーーこの先挑戦したい仕事ややりたいことはありますか?

お客様の現場に行って仕事をする際など、もっと素早い対応ができるようになりたいです。そして技術をもっと身につけて1人で仕事ができるようになりたいです。

ーー将来はどのように考えていらっしゃいますか?

いつかはベトナムで土橋電気の支社を作り、ベトナムのお客様に「土橋電気は技術があり良い機械を作るので使ってみてください」と紹介したいです。それが今の夢です。

ーー最後にかつてのフィーさんのように日本で働くことを目指している方へのメッセージやアドバイスなどあれば教えてください。

日本は色々な新しいことや面白いことがたくさんあります。楽しいことですが、でもその前に仕事をするには日本語を一生懸命勉強した方がいいと思います。


続いて、フィーさんと共に働く中で感じたことやどのようにコミュニケーションを取っているかなど、受け入れる側のお話をシステム設計部長の野村一樹(のむら かずき)さんにお伺いしました。

“言葉”が大事

画像9

ーー野村さんは勤続何年目ですか?

22年になります。現在は社員の工程管理、設計指示、顧客対応などをしています。

ーー土橋電気に入社したのはどんなきっかけだったのですか?

社長と従兄弟同士の関係で、子供の頃から現場に連れて行ってもらったり、パソコンを触らせてもらったりと身近だったので入社しようと思いました。

ーー土橋電気で外国人採用をすると決まった時、はじめはどんなイメージを持っていましたか?

外国の方は正直結構大ざっぱなイメージがありました。実際そのイメージ通りな部分もあるのですが、それ以上に言葉の壁がありました。

画像10

ーー具体的にはどのような場面で言葉の壁を感じましたか?

細かい部分の言葉が伝わりにくいです。「〜が」なのか「〜は」なのかによって言葉のニュアンスが大きく変わると思うのですが、そういった細かいところです。というのも土橋電気ではプログラミングを作る時に、全ての情報や指示を図面に書くだけではなく、コミュニケーションの中でイメージを共有して伝えてプログラムに落とし込むというやり方をとっています。そのため、会話の中でイメージを伝えるのが必要不可欠なのですが、言語が違うとそこがなかなか難しいです。

ーー言葉が重要な仕事なのですね。

でもそれって外国の方だけが難しい話でもなくて、日本の方でも人によっては結構難しいです。イメージを共有して解釈するまでに時間がかかります。

ーー何か工夫はされていますか?

まず根気と熱意が大事です。あとは絵に書いて教えるということですね。これは社長の教えで土橋電気ではみんなやっています。ホワイトボードや裏紙を使ってイメージを確かめ合います。理解している者同士でも絵に書いて確かめています。

ーー理解している方々同士でも絵に書いて確かめているのですね。1年間フィーさんと共に仕事をしてきて、コミュニケーションの部分で変化はありましたか?

少しずつイメージが共有できるようになって、理解していると感じます。もちろん怪我や事故を防ぐため、お客様にご迷惑をかけないために確認はしっかりしています。

画像11

ーー今後フィーさんに対して期待することなどはありますか?

打ち合わせ、設計をし納品するところまで日本で1人でできるようになって欲しいと思います。日本人でもそれができるようになるまでに10年ほどかかりますので、一歩ずつやってくれたら嬉しいです。

ーーフィーさんと一緒にやりたい仕事や挑戦したいことはありますか?

フィーさんの夢でもあるベトナム支社設立は一緒にやりたいです。ベトナムで機械を立ち上げて納品して、良いものだねと言ってもらえるような仕事がしたいです。そうなればフィーさんも日本で学んだ技術をベトナムで活かすことができると思うので、フィーさんもやりがいがあると思います。

ーー是非実現された時にはまた取材させてください。最後に外国人採用に挑戦したいと考えている製造業の方々に向けて、受け入れる側として感じたことを教えてください。

やっぱり言葉ですね。言葉に尽きるかもしれません。
仕事をする上で、コミュニケーションを取るための言葉が本当に重要です。特に私たちのような技術職や専門職はなおさら大事だと思います。

同じ言葉でも独特のイントネーションがありなかなか伝わりづらいということもありました。例えば日本ではケーブルと発音しますが、ベトナムだとケブルと聞こえるような発音です。そういった細かい違いなども少しずつすり合わせて、お互いが通じ合う言葉を増やしていくことが大事だと思います。

(この後、土橋電気の代表取締役である土橋弘晃さんにもお話を伺いました。そちらもぜひご覧ください!)

有限会社土橋電気
代表取締役 土橋弘晃
本社所在地 静岡県富士宮市下条927-1
会社HP  有限会社土橋電気


編集後記

別記事の土橋社長のインタビューを読んでいただくとわかるのですが、「はきはきとされており、笑顔が良かった、明るかった」のがフィーさん採用の決め手だそうです。インタビューしていても明るく前向きなのが伝わり、言葉が通じないことが問題ではなく、どう乗り越えていくか試行錯誤することが大事だと感じました。

この記事をご覧になった方への編集部オススメ記事

更新情報は、SNSやnoteでお知らせしています!
ご意見ご感想などは ハッシュタグ #ものづくり新聞 でぜひ投稿をお願いします!編集部一同、楽しみにしております! 

Twitter
Facebook
Instagram
noteのものづくり新聞

■本企画に対するお問合せ先
ものづくり新聞(株式会社パブリカ)編集部 : monojirei@publica-inc.com