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ものづくり新聞をはじめた理由

ものづくり新聞 編集長の伊藤です。

当サイトは製造業の方々向けにインタビュー記事を掲載しているWebメディアです。ソリューションやサービスの提供元へのインタビューはもちろん、実際に製品やサービスを導入した側へもインタビューしています。ものづくり企業に勤める皆さんにとって本当の意味で役に立つ情報を提供したいという思いで、ただ情報を羅列するのではなくより具体的なイメージができる情報発信を目指しています。

たとえば、こんな大阪にある印刷会社さんの取り組みをインタビューした記事を公開しています。

私は、父親が機械設計業を営んでいたこともあり、大学で機械工学を専攻しました。大学で機械工学を学んでみて感じたことは、ものづくりは総合技術だということです。材料力学、熱力学、流体力学(俗に3力学といいます)のような力学知識はもちろん、機械加工、材料、電気制御、環境、IT技術、デザイン、工業経営、品質管理など、非常に多様な技術を求められます。そう考えたときに、自分は図面を書くということではなくもっと広い視野でとらえてみたいと思っていました。特に当時IT技術が進んできており、製造業xITは今後重要になると感じていました。

しかし、現実としては、大手製造業は別として、中小のものづくり企業は私が大学を卒業した当時から大きく変わっていないのかもしれません。「ライン・製造工程全般の機械の稼働状態について見える化を行っているか」という調査に対して、「できている」と回答したのはたったの17.9%の企業しかありません。これは30年前のデータではなく、2019年の調査結果です。こんなにIoT技術だ、AI技術だと言われている昨今であっても、機械の稼働データが取れているのは5社に1社以下しかありません。おそらく中小ものづくり企業に絞ればもっと数字は小さいのだと思います。

ものづくり白書には他の調査結果もありますが、ここからいえることは、データが取れているかどうかという議論だけではなく、設備や仕事のやりかた自体も、30年前からあまり変わっていないかもしれないということを示唆しています。

一方、小売業、金融業やサービス産業などはITを活用して大きく変化しました。FinTech, EdTech, MediTech, PropTechなど、たくさんのなんちゃらTechがありますが、あれ、製造業のTechは?と思いませんか?ManuTech? そう、そんな言葉を普及させたいという方もおられます。私たちがインタビューしたグローバライズさんは「ManuTech」を商標登録されています。

製造業だって、もっと変えていきたい、ITをうまく活用して革新を実現してほしい、ということを強く思うようになりました。

製造業向けのコンサルティングという役割で私はいろんな企業をサポートさせていただく機会がありました。しかしそれでは1社ごとしかご支援できません。日本で製造業に従事する方々はおおよそ1000万人もいらっしゃいます(ものづくり白書2020)。日本の生産年齢人口(15歳以上65歳未満)はおおよそ7500万人です(統計局人口推計2020)ので、おおよそ7人に1人が製造業に直接従事しているということになります。そんな方々にもっと支援が提供できないかと考えていました。

たまたま最近になり、ベンチャーキャピタルの方とお話しする機会があり、「製造業向けのB2Bの口コミや事例をあつめて製造業と提供者側でマッチングできればいいんじゃないか」というアイデアが出ました。しかし、B2Bで口コミはなかなか難しい。ならば自分たちで製造業の声を直接集める活動をしてみよう、と思いました。

さらにたまたま、このような考え方に賛同してくれた方が何名かおられ、素敵な方々にジョインいただきました。

これは何かそういうタイミングなんだろうと思い、新型コロナ下の2021年初頭からものづくり新聞の企画がスタートしました。

ものづくり新聞のターゲットは製造業、特に中小のものづくり企業に勤める方々です。

企画当初から、インタビュー記事を中心にしようということを決めていました。理由は、できるだけ現場の生の声をお伝えしたかったからです。口コミが知りたくなるのは、間に人が入っていない生の声がそこにあるからです。私たちのフィルターをできるだけ入れず、製造業の現場の方々の生の声をお伝えしたい、という思いがあります。

さらに、できるだけ若手の方々にインタビューしたいと考えました。製造業のインタビューとなりますと企業の社長さんか、職人さんのどちらかになりがちなのですが、実際現場のIT化を推進するのはそのどちらでもないと思います。推進する方々のご苦労や工夫が知りたいと思うのです。

製造業のデジタル化やIT化を推進するときに、そのような取り組みを誰が推進することになると思われますか?他の業界であれば、外部から中途入社で採用したり、コンサルタントを雇って推進すると思われる方が多いのではないかと思います。しかし、製造業はそうではありません。ものづくり白書によれば「自社が保有する技術や製品について熟知している」ことが最も重要であると言っています。つまり、中途入社ではなく、自社のことをよく知る社員を育成し、デジタル化やIT化を推進するべきと言っているのです。

一方で、そのような方々は現業も抱えていますので、改革の取り組みだけを推進することはできません。おそらくいろんな依頼事項やタスクがたくさんある中で、デジタル化やIT化も推進しなくてはなりません。時間がないのです。

ものづくり新聞はそのような方々に、効率よく他社の事例や最新の情報を入手する手段の一つになれればいいなと思っています。さらにそのような方々に「何か相談したいことがあれば、相談できる窓口」になれればよいなと思っています。

そのような活動が、日本だけではなく、世界のものづくり企業にお役に立つと信じています。