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隠れてるけど実は美しくカッコいい基板を表に出したい スタートは“ピンクのプチプチ”? 株式会社電子技販 北山寛樹さん

ものづくり新聞

大阪府吹田市にある株式会社電子技販の北山寛樹(きたやま ひろき)さんにお話を伺いました。電子技販はプリント基板の実装や電子部品の販売をしています。

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3ヶ月かけてオーストラリア1周を達成

ーー北山さんは大学卒業後すぐ家業に入られていますが、元々そのような予定だったのですか?

本当は外国語学部に進学し、オーストラリアで日本人向けの観光ビジネスをしたいと思っていました。昔「なるほど!ザ・ワールド」という番組に出ていたオーストラリア人が底抜けに明るくて、こんなところに住んでみたいと思っていたんです。でも、父から工学部か経営学部に行ってほしいと言われ、将来継いでほしいのかなと察するところもあり、外国語学部には進学しませんでした。

ーー察したのですね。

父親が寡黙な人だったのではっきり言われたわけではなかったです。でも、子供の頃から継いでほしいという思いをなんとなく感じ取っていました。
ちなみに、小学2年生の時に大阪府枚方市から吹田市に引っ越してきたんですが、当時は1階が事務所、2階が基板の実装工場、3階が住居でした。

ーー従業員の方々との交流はありましたか?

子供の頃は残業時の食事を工場に持って行っていました。工場を通らないと家に帰れなかったので工場は身近でした。

ーー子供の頃は家業に対してどのようなイメージを持っていましたか?

華やかなところには見えなかったです。子供の頃は簡単な仕事を手伝うこともありましたが、将来ここで自分も働きたいとは全く思っていませんでした。高校生くらいまではオーストラリアで働くつもりでしたね。

ーーオーストラリアには行かれたのですか?

大学4年生の時に友達と2人で行きました!オーストラリアの現地でバイクを買い、総距離約2万キロ、3ヶ月間掛けてオーストラリアを一周しました。友達とは一緒に走ったり途中分かれたりしながら、当時は携帯電話がなかったので「○日にこの場所集合」とだけ決めて旅しました。

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ーーバイクで2万キロはすごいですね!

しかも情報源は「地球の歩き方」だけです。観光ビザの有効期限である3ヶ月以内にオーストラリア一周して帰るということだけ決めて、あとは何も決めませんでした。400キロ以上信号もなく同じ景色がずっと続く道があって、走行中どうしても眠くなってしまい、道から落ちて目覚めるなんてことも何回もありました。

ーーオーストラリアの方々の明るさは感じましたか?

明るさと人のぬくもりを感じました。過去に日本に留学していたオーストラリア人が珍しがって声を掛けてくれて、週末友達とパーティーするから来いと誘われたり、バイクが故障した時にはピックアップトラックに載せてくれて1週間くらい泊めてもらったりと本当にあたたかい人が多かったです。

ーー北山さんは子供の頃から行動的なタイプですか?

そうですね。小学生の時は吹田市から琵琶湖まで自転車で釣りに行ったことがあります。片道40キロくらいあります。ブラックバスが釣れたらそれで味噌汁を作ろうと思ってたんですが、釣れなかったので琵琶湖の水をすくって味噌を溶かして飲みました。小学生の私は出汁を入れなきゃいけないことを知らず、まずかったです。笑

部品商社からスタートした

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ーー電子技販で製造・実装している基板はどのようなものに使われていますか?

わかりやすい例だとバスの運賃表示機や、駅のホームにある表示機などに使われています。仕様書、回路図、部品表を支給していただいて製造しています。多品種小ロットの受注が多いです。

ーー基板事業において電子技販の特徴はありますか?

弊社は部品商社からスタートしています。創業者の父が元々ある部品メーカーに勤めていて、その会社の部品の卸売から始まり、徐々に基板一式を作るようになりました。そのため部品の情報に強く、基板実装において部品の保守品や廃品の情報、相当品のご提案、更にはこうした方が安くなったり小さく作ることができますよというご提案もできます。

ーー北山さんは大学卒業後すぐに家業に入社されていますよね。当時はどんなお気持ちでしたか?

会社って、ずっと続くと思っていたんです。
技術的に強みがあると思って入社したら、うちの強みは私の父親の営業力だったのです。父を頼りにしてくれている得意先もいらっしゃいましたが、父を慕っていただいていた取引先担当者の定年退職と共に強固な取引関係は弱まっていきました。自分たちだけの技術というものは特になく、言われたものを作るという仕事をしてきたことに入社して初めて気付き驚きました。

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ーー近くで見ていても入社してみないと気付かないことがあったのですね。

大ロット生産の製品は海外へ流れ、うちには小ロット生産か複雑な構造の製品しか注文が来ませんでした。景気が悪くなり仕事は激減しました。父親に相談しても「もう俺の時代ではない。自分のことは自分で考えろ。お前も苦労したらええねん」としか言わず。笑 私自身経験がないので何をするにも判断ができず、失敗するかもと思ってしまい、新しいことを思い付いても行動に移せない日々が続きました。でも待っていても状況は変わらないと思い、大学院に行くことを決意しました。

ーー大学院ではどんなことを学ばれたのですか?

30歳の時に大阪府立大学大学院に入学しました。大学院では「仕組みによる差別化戦略」について学び、他社から真似されにくい仕組みを持つサービスと自社の強みを活かした自社でしかできないビジネスを考えました。
その結果、部品にも強くてものづくりもできるという点は基板の実装会社としては珍しいかもしれないと思ったのです。更に、基板の研究や試作で一度きりの製造をしたいという人があちこちにいるんじゃないかとも思い、インターネットを通して注文を受け付けてみようと思い付きました。

ーー具体的にはどのようなサービスだったのですか?

基板の設計、部品調達、基板の製造、実装までの4工程を最短納期で提供するサービスです。簡単な基板であれば半日〜1日で納品しますと謳いました。この4工程を最速でやるにはうちだけでなく、様々な協力会社さんが必要です。技術力やスピード、得意分野などそれぞれ特徴があるので場面によって様々な協力会社さんに協力してもらうことで素早く提供する体制を取りました。
大学院2年生の時にこの新規事業をスタートさせ、展示会に出展するとありがたいことにお客様が増えたのです。初めてうちの会社に武器ができたと感じました。

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ーー研究や試作用で一度限りの基板実装を頼みたいのに、なかなか頼む先がないという方々は多いのですか?

そうですね。気軽に頼めるところはあまりなかったと思います。でもその悩みにはっきりと気付いていたからこのサービスができたのではなく、とにかく何かやってみようと考えた結果でした。やってみたらちゃんと反応もあり手応えを感じました。

ーー経営的な部分には入社した頃から関わっておられたのですか?

入社したての頃、午前中はジーンズ履いて工場で働き、午後はスーツを着て営業をするという生活でした。営業先で「この工程のここが困っている」と聞くと製造ラインに入って提案することもありました。
結局は父親と変わらないことをやっていたんです。1人で動いて仕事を取って・・・という感じです。飛び込み営業に行ったり、人伝てにお客様を紹介してもらったりしていました。

「基板萌え」が降ってきた

ーー自社ブランド「PCB ART moeco」が生まれた最初のきっかけはトイレの取材だったと伺いました。どういうことでしょうか・・・?

2014年に「トイレ空間を考える」という番組の取材を受けました。トイレ含め新しい社屋を作ってくれた工務店さんの推薦でうちに取材が来たんです。会社について質問され答えるのですが、面白い回答を求めて色々な角度から質問が飛んでくるんです。笑 プレッシャーを感じつつ何か言わないとと思い最後に「基板萌えという言葉が天井から降りてきました」と言ったらOKが出ました。

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*取材されたというトイレがこちら。壁は漆喰でカウンターやペーパーホルダーなどは木製で豪華です。

ーー基板萌えという言葉が生まれた瞬間ですね。でもそこから自社ブランドへはどう繋がっていくのですか?

番組の放送が3月で、その後4月に入社した総務の新入社員の女性に5月に展示会へ出展する時の内容や企画を考える仕事を任せました。するとその女性社員から、「社長が基板萌えって言ってたから基板のアクセサリーを作りましょうよ」と言われたのです。製造途中でNGとなった基板を細かく切りピアスなどのアクセサリーにしました。切る作業は営業が担当していました。

ーー展示会にアクセサリーを出展されたのですね。

その展示会は中小企業向けの展示会で、テーマは特にありませんでした。基板で出展してもなかなかマッチしなくて、だったら何か別なものを展示してみようと思い、半分基板、半分アクセサリーを展示しました。
これが想像以上に好評で、2日目以降は1つ1,000円の値段をつけて販売したところ16,000円も売れたんです。正直驚きました。

ーーその後基板のアクセサリーは販売を続けたのですか?

その年の8月にあった「スモールメイカーズショー」という東京都墨田区で開催された町工場のお祭りに出展しました。その時は女性社員がアイデアを出して、私が形にしました。自宅でコツコツ基板を削ってピアスや名刺入れを作ったところ、今度は85,000円くらい売れたんですよ。売上ももちろんですが、その時に代官山蔦屋書店のバイヤーさんと出会ったことが一番大きな出来事でした。

基板デザインの名刺入れ

ーーそれまではバイヤーさんとの繋がりなどはなかったのですか?

全くありません。基板グッズもその展示会のために作ったものだったので、カタログが欲しいと言われてもありませんでした。名刺を渡したところ、後日連絡が来て代官山蔦屋書店で一度製品を見せることになりました。

ーー大阪から代官山に行かれたのですか?

代官山蔦屋書店はめっちゃおしゃれなところでした。笑 そこで男性向けの雑貨を作ってくれないかと言われ、まずはフェアに商品を置いてもらうことになりました。そこで東京都内の路線図を回路図で表したデザインを考えました。

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ーー北山さんがデザインされたのですか?

そうです。これ以降もずっと私がデザインしています。
私が鉛筆でデザインを書いて社員にデータ化してもらいました。なかなか思ったようなデザインにならず苦労しましたがなんとかデザインを作り、バイヤーさんから紹介してもらった名刺入れメーカーの方とコラボして基板デザインの名刺入れが完成しました。

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iPhoneケースのLEDを光らせたい

ーー名刺入れのデザインを活かして次に作られたのがiPhoneケースと伺いました。

iPhoneケースはこだわりを持って探されているユーザーが多いと思い作りました。iPhoneケースが形になったあたりで実は私個人としては商品開発に対して結構満足していました。自分がデザインしたものを自社製品として形にすることができ、評価もしていただき、十分喜んでいました。代官山蔦屋書店でのフェアも成功しヒットしました。
でも、みんなからiPhoneケースのLEDが光ったらいいのにと言われまして・・・。最初に開発した製品は赤色LEDを乗せているだけで光らなかったのです。

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ーーiPhoneケースに付いているLEDを電池に光らせるのは簡単ではなさそうです。

うちは開発部がないので、そういったことをじっくり研究する部署がありません。そこで社員の1人に「毎日30分でいいから、どうすれば電池なしでLEDが光るか実験してほしい!」と頼みました。でもそんなこと初めてですし無理ですと言われて、大学や開発会社にも相談に行きました。その結果、微弱な電波を増幅させて電圧を高める必要があるということはわかったのですが、それを実現することはできないと言われてしまいました。

ーーそれからどうされたのですか?

当時はまだコロナ禍前だったので、会社の昼食スペースでみんなでランチしていました。その時に最初に頼んだ社員に「30分でいいから。思い付く部品とか自由に買って良いからチャレンジしてみてほしい。」としつこくお願いしました。すると半年ほど経った頃その社員がiPhoneケースのLEDが光る仕組みを開発してくれたんです。

ーーすごい!

裏にアンテナの回路があり、そこで電波をキャッチして電池を使わず電気を発生させています。デザインとしての部品と機能を持つ部品があり、それらを配置しながら電気を地図上の東京駅にあるLEDに集めて発光させています。

本当に欲しい人に使ってもらいたい

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ーー名刺入れやiPhoneケースを販売する際に、価格決めやパッケージなどはどのようにして決めたのですか?

自社製品を開発し販売するのが初めてだったので、最初は何でもバイヤーさんに聞いていました。月に1度試作品を代官山蔦屋書店のバイヤーさんたちに見せに行き、様々なバイヤーさんが集まってくれてアドバイスをもらっていました。時にはダメ出しされ凹むこともありました。
その時に値段はどうするのかと聞かれ、正直「え、値段って自分で考えなあきません?」と思いました。笑 でも本業でコストカットのことばかり言われて苦しい経験があったので、自分で売りたい値段を決めようと思いました。マニアックな製品なので本当に好きな人に使ってもらいたいと思い、価格を決めました。

ーー価格決めは悩まれるところですよね。梱包やパッケージなどはどうされたのですか?

梱包に関してもバイヤーさんにどうするのかと聞かれました。本業の基板は通い箱に並べて運ぶんですが、そのまま答えたらあかんなと思い、ちょっとおしゃれにしようと「ピンクのプチプチに包みます」と答えたら場がしらけてしまいました。笑(編集部注:プチプチとは気泡緩衝材のことです)バイヤーさんに、「違うよこういう箱に入れて欲しいんだよ」と黒いギフト用ボックスを見せられました。そんなレベルでした。

ーー梱包用の箱も別途探されて、ひとつずつクリアしてきたのですね。

そうです。毎月ダメ出しされ凹みながらも自分で色々な情報を集めたり、写真を撮ったりパッケージデザインをし、何とか形にしました。

ーー販売店はどのように広げていったのですか?

最初はお世話になった代官山蔦屋書店のみの販売で良いかなと思っていました。でもバイヤーさんから、コンセプトに合うお店に置いてもらわないとブランディングにならないと言われ、そうなんや他の店にも置いて良いんやと思いました。笑
それで急遽展示会に出展しました。展示会は基板製品で何度も出展経験がありますが、いつも閑散としていました。それが自社製品で出展してみたら、本当にたくさんの方々に来ていただき、取引先が増えていきました。

ーースターウォーズ、エヴァンゲリオン、機動戦士ガンダムなど有名作品とのコラボ商品もありますが、どのような経緯でコラボに至ったのでしょうか。

人気のある有名なキャラクターとコラボした商品を作ってみたいとはずっと思っていました。人伝てで過去にコラボ商品を作ったことがあるという人を探して、連絡先を聞きまずはメールしました。でも返事がなかったので電話しました。2週間くらい毎日のように電話するとやっと繋がり、提案したいことがありますと話すとPCB ART moecoの商品をご存知の方で、どんな人が作っているか見たいから来てくださいと言われました。それがきっかけです。

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ーーアタックが実ったのですね!

そこからも一筋縄ではいきませんでしたが、何とか形にすることができました。その後も様々な企業とコラボさせていただく中で、ある企業様とコラボ商品について商談中、私が仕事の話や基板のことを説明すると「面白いじゃん一緒にやろうよ」と言っていただくことがありました。やはり私自身が動いて自分の口で説明することで、基板に対する思いや基板の細かい話まででできるのでそれが良かったと思います。

ーー基板が好きという方の購入が多いのでしょうか?

基板のことを知っている人がそもそも少ないので、基板好きだから買いましたという方は実はかなり少ないです。

恥ずかしがらずやってみること

ーー自社製品のこだわりを教えてください。

基板って必ず製品の中に入るものなので、みんな基板の美しさを知りません。実はカッコいいものだと気付くタイミングがないのです。
子供の頃から家の製造工場も遊び場の一つでした。2層式の基板は蛍光灯にかざすと裏の配線が見えるんです。まだファミコンがなかった時代、それが面白くて基板を眺めて過ごしていました。ずっと基板を見てきてカッコいなと思っていたので自社ブランドのキャッチフレーズも「基板とは完璧に計算された芸術である」と決めました。

ーー北山さんにとって基板とは芸術品なんですね。

芸術品であると言っているからには、美術館に置いてもらわなあかんやろと思い、インターネット経由でアタックし、国立新美術館と東京都美術館に商品を置いてもらっています。

ーー社員の皆さんの反応はどうでしたか?

最初は応援してくれる感じではなく、やっぱりなんか変なことやっている風にしか見えていなかったと思いますね。本当に低額の予算でやっているから心配しないでと言いながら1人でやっていました。銀行や会計士さんにも、どのくらい売れていつ利益が出るのと聞かれました。

ーー評価や反応が変わってきたのはいつ頃からですか?

1年くらい経った頃でしょうか。段々メディアに出るようになって、少しずつ社内の人にも見直してもらえるようになりました。やっぱり外部評価は大きいですね。

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ーー最後に、B2Cに挑戦している製造業の方にメッセージをお願いします。

まず自分たちが持っているこだわり、技術、得意分野を見つける。そしてそれを活かして何かやってみる。そして評価をもらうことが大事だと思います。いきなり大きく広げるのではなく小さくてもいいと思うんです。

何よりもまずやってみること。色んな人に会ってみること。そして想いをぶつける。バイヤーさんに想いを伝えないとエンドユーザーさんにも思いは伝わらないです。恥ずかしいとか考えずに何でも質問していった方がいいと思います。私なんかあのおしゃれな場所でピンクのプチプチで挑もうとした男です。笑 恥ずかしいと思わないで何でもやってみてください。

株式会社電子技販
所在地 大阪府吹田市豊津町62番8号
代表取締役 北山 寛樹
会社HP  株式会社電子技販


編集後記

最後の北山さんの言葉にあるようにどの場面においても“恥ずかしがらずにまず行動”した結果が現在であると感じました。本インタビューではB2C市場や自社商品という未知の世界でも、北山さんらしく突き進んでいった歴史を伺うことができました。

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