ものづくり新聞
イチからものづくりするのは面白い 有限会社コバ 小林巧弥さん
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イチからものづくりするのは面白い 有限会社コバ 小林巧弥さん

ものづくり新聞

群馬県みどり市で金属旋盤加工業を営む有限会社コバさんを訪ねました。

特徴は「手込め(てごめ)」による切削加工を行なっている点です。手込めとは手作業による加工のことで、もちろん機械は使いますが手作業が多く、人の目が入るため製品異常に気付きやすく、不良品を未然に防ぐことができます。小ロットでの加工にも適しており、多品種少量生産のオーダーにも対応できます。コバはあらゆる形状、仕様、数量の製品に対応するため「手込め」加工を取り入れています。

コバ提供

今回は取締役副社長の小林 巧弥(こばやし たくや)さんにお話を伺いました。

ーー主にどのようなものを製造していますか?

業界は自動車、航空機、工具、建機(建設で使用される重機)など多岐にわたっています。主に機械内部の金属部品を製造しています。

ーー小林さんはどのような仕事を担当されていますか?

主に新規開拓したお客様を中心に担当しています。他にも営業として顧客の新規開拓や、外部との関わりも担当しています。最近だとTwitterを通した問合せやご依頼も増えてきました。父親と社員2名は長くお付き合いのあるお客様を担当しています。

ーーTwitterで町工場を探されている方がいらっしゃるのですか?

そうです。Twitterアカウントに会社のホームページをリンクさせているので、Twitterを介してホームページに辿り着く方が多いようです。最近はブラウザの検索からホームページにアクセスする方よりも、Twitterを介してホームページを見てくださる方が多いです。

子供の頃、工場は少し近寄り難かった

ーーお生まれは群馬県ですか?

はい。高校卒業まで群馬に住んでいて、大学進学で東京に出ました。田舎から出たい気持ちが強くて、高校卒業後は家を出て都会で一人暮らしをしてみたいと思っていました。

ーー大学で夢中になったことはありますか?

大学生の頃はドラマやCMなどのエキストラのアルバイトに夢中になっていました。大学卒業後も役者として芸能事務所に所属して活動していました。トータル4年ほど役者活動をしていました。

ーー役者としてどのような仕事をされていたのですか?

ドラマやCM、舞台も経験しました。会社勤めよりは楽しそうだなと思っていたところも少しありましたが、やってみてそんなに甘い世界じゃないとわかりました。その後は全国チェーンの居酒屋でアルバイトをし、社員になり働いていました。東京の国分寺や吉祥寺などで居酒屋の店長として働いていました。

ーー東京で働いていた頃は、いつか家業に戻ると考えていたのですか?

全く考えていませんでした。東京でずっと暮らしていくつもりでしたね。

ーー子供の頃はいかがでしたか?

工場は危ないと教えられていたので、少し近寄り難い印象でした。父から何度か将来継いでほしいと言われたこともありましたが、あまり真に受けてはいなくて自分の生きたいように生きると思っていました。

ーー町工場の社長であるお父様はどんな印象でしたか?

苦労している姿を見ていたので、子供ながらに大変なんだろうなと思っていました。子供の頃家族でたまに外食した時に、メニューの値段を見て少し気を遣っていた記憶があります。

家族だから ぶつかった 家族だから乗り越えられた

ーー家業に入社して何年ですか?

2022年で丸9年です。東京での生活や仕事している中で改めて自分の将来を考えると、家業をやってみてもいいかなと思えるようになり入社を決意しました。入社するまでは工場のことはほとんど知りませんでした。町工場はきつそうなイメージがありましたが、実際何がきついのかは入社して初めて知りました。

ーー具体的にどのようなことがきつかったですか?

様々ありますが、朝から晩までずっと同じような作業の繰り返しで、やっても結果がついてこないのが精神的に一番きつかったです。家業だからなんとかこらえることができた部分もあったので、他の人なら絶対無理でしょと思いました。身を持って経験したことで、変えていかなければいけないことにも気付きました。

ーーどのようなことを変えていこうと考えたのですか?

まず勤務時間です。毎日残業ありきの計画を立てていて、21時頃まで働いていました。それを退勤目標19時、最大20時までにしたいと提案しました。身近なところから変えていこうと父親や先代の社長である祖父に相談しました。

ーーお父様やお祖父様はどんな反応でしたか?

勤務時間のこと以外に関しても、父や祖父が長年やってきたスタイルがあるので衝突はありました。勤務時間が減ってしまったら生産性が下がり、仕事がもらえなくなってしまうのではないかという不安もあったと思います。それでも変えていくべきだと明確に思っていたので、こつこつ説得して最終的には納得してもらいました。

ーー仕事はどのように覚えていきましたか?

私が入社した頃は祖父が現役で働いていたので、主に祖父から仕事を教わっていました。祖父は自分の仕事を孫である私に教えたいという思いが強かったので、熱心に教えてくれました。入社してから2年後に祖父が病気で仕事ができなくなり、そのカバーを私がしなければならなくなった時に追い込まれて鍛えられました。それがきっかけでもっと仕事を覚えたいと思うようになり、現場での勉強はもちろん、家に帰ってからインターネットでものづくりについて調べて勉強することも増えました。

ーー小林さんご自身は家業に入社してどうですか?

大変なこともありますが、やってみたらすごく楽しかったです。知らなかっただけで、イチからものづくりするのは面白いと思いました。家族経営なのでいろんな場面で家族との衝突もありましたが、そんなことどうでもいいやと思えるくらい楽しくてものづくりが好きになりました。

ーーどんな時に仕事のやりがいや楽しさを感じますか?

ものづくりをしている時はもちろんのこと、お客様に喜んでもらえるのが嬉しくてやりがいがあります。私が入社してから会社のホームページを開設して新規のお客様も増え、色々なお客様と接するようになりました。その中で、自分たちができることをきちんとすればお客様に喜んでもらえることに感動しました。大変なことはありますが、その喜びと仕事の楽しさがあったので乗り越えられました。

実験でもある自社製品開発

有限会社コバは「8TK8(インフェニティケイフェニティ)」として以下の自社製品を販売しています。

■『MIKO(ミコ)』 調味料入れ
■『TUMA(ツマ)』 カプセル型爪楊枝入れ
■『KING BRIDGE(キング ブリッジ)』 箸置き
■『AKUSENT(アクセント)』 栓抜き

 『MIKO(ミコ)』 調味料入れ (コバ提供)
『TUMA(ツマ)』 カプセル型爪楊枝入れ (コバ提供)
『KING BRIDGE(キング ブリッジ)』 箸置き (コバ提供)
『AKUSENT(アクセント)』 栓抜き (コバ提供)

ーー自社製品開発に取り組み始めたきっかけを教えてください。

2020年夏頃、コロナ禍によって仕事が減ってしまったことがきっかけでした。時間があるし、何かしないとと不安に思いながらTwitterを見たら、株式会社栗原精機のおやっさん(栗原稔さん)を見つけて、なんか楽しそうな活動しているなと思いました。その流れで町工場プロダクツ*を知り、私も東京インターナショナルギフト・ショーに出展したくなり何か作ってみようかなと思いました。

*町工場プロダクツとは、ものづくりコミュニティ『MAKERS LINK』から派生した、自社製品の開発/発表/販売を通じ、町工場の活性化を目的とした活動チーム

ーーギフトショーではどのようなものを展示したのですか?

これを売りたいというのはその時はあまりなくて、真鍮を削って作った駒やキーホルダーを展示しました。何かしないといけないとは思っていても何をすれば良いのかまだ明確に見えておらず、こんなことができる会社ですというアピールの意味合いの方が大きかったです。

ーー反応はありましたか?

そのギフトショーで有限会社宮本工業の宮本智(みやもと さとる)さんに出会いました。宮本さんに自社製品作ってみようと思っていることを話したら、「爪楊枝入れ作ってみて!」と言われたんです。自社製品を作りたいと思っていても、今まで図面をいただいてその通りに作る仕事をしてきたので内心お題が欲しいなと思っていたところだったので、じゃあやってみようと爪楊枝入れを作りました。

ーーでも大きさや重さなどは小林さんが考えられたのですよね?

そうなんです。NGとかはないけど、こうすればいいという正解がないので難しいところもありました。通常の仕事の合間や終わった後に1人で開発していました。

ーー自社製品に対する周りの方の反応はどうですか?

始めたばかりの頃は前例がないことを私がやっていたので、何やってるんだという目もあったかもしれません。今は形になり、それがきっかけで新規のお客様が増えたという実績もついてきたので、会社が良くなるなら良いんじゃないかと思ってくれているようです。

ーー売上の一つにしたいという思いはありましたか?

あまりなかったですね。役者を始めた頃と似たような感じで、刺さる人に刺されば良いという思いの方が大きいです。何万個売りたいというより、楽しみながら作ったものが誰かの心に刺されば嬉しいですね。

ーー思い入れのある製品はありますか?

高級調味料入れの『MIKO(ミコ)』です。銀色であるステンレスに「酸化発色」という表面処理を施すことで発色し、光の当たり具合によって虹のように見えます。この処理ができる企業さんが全国でもかなり少なく、展示会の時に偶然見かけたことでこの技術を知りました。ステンレスの色付けってあまり見たことがなかったですし、私自身好奇心が湧き実験してみたいと思って挑戦しました。こんな処理や加工をしてみたいという気持ちが自社製品開発を後押ししてくれた気がします。

ーーステンレスという素材を選んだ理由はありますか?

航空機関係の仕事でステンレス素材を使うことが多く、社内にも在庫が多くあります。航空機関係の仕事で培ってきた加工技術を自社製品に活かしたいと思い選びました。普段よく触れているステンレスが酸化発色でどんな色になるのかも興味がありました。

変わり者と思われても目立っていきたい

ーー自社製品に関して課題はありますか?

製品のデザイン面に課題を感じています。繋がりのある他の町工場さんの話を聞いたり、製品を見せてもらったりするとデザインが優れているなと思うことがあり、自社の製品ももう少しデザイン性を高めたいと思っています。今すぐデザイナーさんに依頼するのは正直難しいのですが、検討していきたいです。

ーー自社製品を通して伝えたいことはありますか?

はみ出し者じゃないですが、変わり者と思われても目立っていきたいと思っています。地元では自社製品に取り組んでいる町工場はあまりないので、「何やってるんだあいつ」と思われているかもしれませんが、どんどんアピールしていきたいです。

ーー会社として今後取り組みたいことはありますか?

自社製品に関して今は私1人でやっていますが、いずれ会社としてうまく回していきたいと思っています。自社製品開発に限ったことではありませんが、将来的に新しいメンバーを迎え入れることも考えています。

ーー小林さんの夢や目標を教えてください。

ゆくゆくは有限会社コバを継ぐ予定でいるので、自社製品だけでなく経営的にも勉強していきたいと思っています。「コバちゃんがいてくれたからよかった」と言ってもらえるようにやってきたいと思います。

有限会社コバ
所在地 群馬県みどり市笠懸町阿左美2638-2
代表取締役 小林 淳
会社HP  コバ
自社ECサイト 8TK8 

編集後記

インタビューを通して、小林さんはとにかくものづくりに夢中になっていることを強く感じました。色々な面で課題はまだまだありますとおっしゃっていましたが、ものづくりが好きだから挑戦しながら頑張りたいという思いも感じました。

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