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もっと使う人に近いところで開発したいーロボティクスプラットフォーム開発を統括する株式会社LexxPluss 西東敦規さん

神奈川県川崎市、新川崎駅近くのJR線路沿いに「かわさき新産業振興センター」があります。このセンターに入居する株式会社LexxPluss(レックスプラス)を取材しました。LexxPlussは物流現場の搬送自動化ロボットを開発するロボットベンチャーです。

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機械・電気制御・ソフトウェアを一貫して自社開発

LexxPlussは搬送ロボットのハードウェアだけではなく電気回路・制御系やソフトウェアまで一貫して自社開発しています。かわさき新産業振興センター内にソフトウェア開発、電気系開発、搬送ロボットの実験エリアを持ち、エレメカソフト一体の体制を持っています。

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エレメカソフト一体、というのは、機械設計、電気設計、ソフトウェア開発をまとめて実施しているということです。大きな会社では機械は機械設計部、電気は電気設計部といったように部署がわかれていることが多く、組織の壁があることも少なくありません。また、全部を社内ではまかなっておらず一部の業務を外部に委託することもしばしばです。しかし、LexxPlussは、社内でそれらのチームを持っており、チーム一丸となって開発しているわけです。

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今回は、このLexxPlussでロボティクスプラットフォーム全体を統括する西東敦規(さいとうあつのり)さんにお話をお伺いしました。

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ソフトウェアのコーディングは自分でやる

🗞西東さんの自己紹介をお願いします。

「社会人になったのは1990年です。それ以来一貫してソフトウェアエンジニアとしてさまざまな案件のソフトウェア開発をおこなってきました。特にハードウェアに近いソフトウェア開発の経験が長く、農業用自律ドローンの量産や販売まで経験してきました。」

🗞1990年といいますと、まだインターネットも黎明期でした。その頃からソフトウェア開発を目指しておられたのでしょうか?

実はもともと乗り物が好きで、機械工学を専攻していたのですが、情報系に興味が移り、ソフトウェア開発に転向しました。当時はUNIX、MS-DOSやホスト系が中心でしたね。」

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🗞車がお好きなんですね。

「はい、好きですね。少し前までは毎年冬になると日帰りでスキーに行くのが趣味でした。毎週末、車でスキー場に行き、スキーを楽しむという生活をしていました。」

🗞毎週末!雪道を車で走るのは大変そうです。きっと4WDですよね。ところで、ソフトウェア開発はコーディング作業もずっとご自身でされているんですか?

「今でも自分自身でコードを書いています。LexxPlussではロボティクスプラットフォーム統括に加えて、ファームウェアや基板初期設計も担当しており、その部分は私自身がコードを書いています。」

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🗞え、そうなんですか?ソフトウェア開発だと最初はコーディング作業をしていても徐々に管理や上流にシフトしていくケースが多いような気がするのですが。

「私はしばらくの間フリーランスでソフトウェア開発をしていた時期もありましたので、自分自身で開発する必要がありました。おかげで、いろいろな分野のソフトウェア開発を経験することができました。」

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楽しそうな雰囲気に共感

🗞今回LexxPlussにジョインされた経緯を教えてください。

LinkedInというSNS経由で LexxPluss代表の阿蘓 将也(あそ まさや)さんやチーフソフトウェアエンジニアの三浦 康幸(みうら やすゆき)さんたちとお話をさせていただき、物流問題をテクノロジーで解決していくというビジョンに共感しました。一緒に働くのが楽しそうな雰囲気で、やりやすそうな気がしました。ハードウェアとソフトウェアをつなぐ量産立ちあげという部分でお役に立てるのではないかと感じました。

🗞『物流問題をテクノロジーで解決していく』に共感されたんですね。

「新型コロナの影響もあり、物流の重要性は高まってきています。荷物の量は増える一方です。一方で、物流倉庫でコンベアを使い搬送を行う仕組みはありますが、コンベアで搬送できない荷物もたくさんあるんです。たとえば長さの長い箱、箱の形になっていないものなどです。これらの荷物は例外として人間が手で運んでいます。」

🗞どうしても人手が必要なんですね。

「そうなんです。作業員が縦横無尽に移動していたり、倉庫内で荷物がそこら中に置いてあってそれが朝昼晩と変化する、ロボットにとっては毎回異なる環境に基づいて判断しなければいけないので、自動化が難しいという問題があります。そこを、ロボットで搬送できれば、人手がさらに減らせることになります。重い荷物を人が運ばなくて済みますし、荷物の量が増えても人を増やす必要がなくなります。」

🗞なるほど、そういう点に着目されたんですね。もともとベンチャー企業にご興味があったのでしょうか?

「ソフトウェア開発が長いと申し上げたのですが、フリーランスでの開発が長かったこともあり、もっと使う人に近いところで開発したい、社会問題を解決したいと考えていました。ベンチャー企業ならそういうことが実現できるのではないかと思っていました。」

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🗞実際ジョインされて、いかがでしたか?

やることがたくさんある!という感じです。LexxPlussの自動搬送ロボットは、2022年に量産が開始される予定です。そのためそれに向けてやることがたくさんあります。今はそれに向けてチームで必死に取り組んでいるところです。」

🗞チームの雰囲気はいかがでしょうか?

「スキルのある人を国籍問わずに採用しているため、アメリカ、イギリス、中国、ベネズエラ、など多様な国の出身の人たちが活躍しています。」

🗞英語も必要ですね(笑)

「あんまり得意ではないのですが(笑)」

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🗞量産開始に向けた課題はどのようなものがあるのでしょうか?

「一番大きい課題は量産での品質担保です。試作品をテストするという段階ではなく、実際の現場で使う自動搬送ロボットを量産するわけですので、トラブル対応のしやすさ、保守のしやすさ、品質のばらつきを減らすなどの対策が必要となっています。今はそれらの課題解決を一つずつ進めているところです。たとえば、品質については、振動試験や衝撃試験を実施しています。今後温度検査や安全基準試験などを行っていく予定です。スタートアップといえどもこのあたりは大切なところだと思っています。」

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🗞2022年は実際の現場で稼働開始するご予定なんですね。

「はい、大手物流企業の新規倉庫で稼働する予定です。」

AMRとAGVを組み合わせる独自アーキテクチャ

🗞LexxPlussの自動搬送ロボットが採用される理由はどのような点でしょうか?

自動運転技術を応用したAMRと弊社独自の次世代AGVを掛け合わせることで正確な自動搬送を実現しているところです。AGV(Automatic Guided Vehicle)は床にガイドを設置しそれに沿って動作する仕組みですが、LexxPlussの自動搬送ロボットはそのガイドを工夫して現場に簡単に設置することが可能です。」

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🗞床に貼ってあるこのシールのことですね。

「そうです。他社のガイドはこのガイドを設置したり変更したりするのが大変なAGVなのですが、私たちのガイドは簡単に設置することができます。


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🗞その一方、AMR(Autonomous Mobile Robot)はガイドなしでセンサーで位置を捕捉するんですよね。

「そうです。AMRとAGVを組み合わせることで正確な走行を実現しつつ、周りの状況にも対応できる自動搬送ロボットを実現しています。」

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🗞量産開始に向けてそのほかにどのような課題がありますか?

「会社が急速に大きくなっていますので、バックオフィスを強化する必要があります。調達や在庫管理なども必要です。今、新型コロナの影響で部品の供給が滞っているものもありますので、量産開始に向けて部品を確保しています。」

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🗞現在は自動搬送ロボットの開発ということですが、そのほかの領域にも進出されるのでしょうか?

「私たちのミッションは物流自動化を加速することですので、そのためにロボット以外でも自動化できる製品を開発しようと思っています。たとえば、コンベアから荷物を自動搬送ロボットに移動する装置を検討しています。この部屋にコンベアを設置し、デモできるようにする予定です。」

ーその時に改めて取材させてください!

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自動搬送ロボットの図面を公開予定

🗞将来に向けた計画をお聞かせください。

私たちの自動搬送ロボットの図面を公開しようと考えています。」

🗞え、この自動搬送ロボットの図面を出してしまうということですか?

「そうです。」

🗞ノウハウが外に出ることになりませんか?

「そうなんですが、私たちはハードウェアを作るだけのメーカーではなく、自動搬送のためのプラットフォームを提供することが目的です。図面を公開することでいろいろなパートナーの方々にロボットを製造いただけるようになればと考えています。オープンにすることで私たちのプラットフォームが広がることを期待しています。」

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株式会社LexxPluss
所在地:神奈川県川崎市幸区新川崎7-7 KBIC本館211号室
代表取締役:阿蘓将也
会社HP:https://lexxpluss.com/

〜🗞取材後記(編集長 伊藤)🗞〜

ハードウェアベンチャーにおられる社員の方々はみなさん若い方ばかりなのだろうと勝手に想像していました。ベテランのソフトウェアエンジニアの西東さんがどうしてベンチャーにジョインしたのか、どのような想いで開発に携わっておられるのかに迫りました。

インタビューさせていただき、西東さんは本当にソフトウェア開発が好きな方なのだと感じました。淡々としたお話の中に熱い想いを感じました。

読者の町工場の方で、この自動搬送ロボットの製造組立にご興味ある方がおられましたらご連絡をいただければ西東さんにお繋ぎいたします!


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