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ものづくりインタビュー

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ものづくりの現場で、改革/改善に挑戦されている人たちに、その取り組みのストーリーをリアルに語っていただくインタビューです。同じように改革/改善に取り組まれている方、そしてこれから… もっと読む
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#ものづくり

眼鏡のまちからときめきを 株式会社キッソオ 吉川精一さん

今回は、福井県の越前鯖江エリアで開かれる産業観光イベントRENEWの参加企業を紹介します。 RENEW(リニュー)は、福井県の鯖江市・越前市・越前町という伝統工芸の産地を中心に、年に一度、3日間にわたり開催される持続可能な地域づくりを目指す産業観光イベントです。RENEWのメイン会場がある福井県鯖江市は、日本国内で生産されている眼鏡の9割以上を生産する眼鏡の一大産地としても知られています。 眼鏡のフレームに使われるセルロースアセテート(以下アセテート)という材料は綿花由来

夫婦の出会いが“柄と繪”の出会い。 山謙木工所 山本卓哉さん 山本由麻さん

福井県越前市の伝統的な産業の一つに、「越前打刃物(えちぜん うちはもの)」があります。南北朝時代、京都のある刀匠が現在の越前市に移り住み、農民のために鎌を作ったことからはじまったといわれています。その後、1538年には専門の打刃物業者が現れ、鎌を製造したという記録が残っています。江戸時代に入ると、商工業者の同業者組織である株仲間が組織され、その技術が受け継がれていきました。(越前打刃物について詳しく知りたい方はこちらから) 農具の機械化により、鎌から包丁へと作るものを変えな

勇気を出してありのままの「木地」を見せたことで、自社製品開発が始まった 井上徳木工 井上孝之さん

漆器製造の世界は、「木地」「下塗り」「上塗り」など複数の工程が必要です。「越前漆器」の産地である福井県鯖江市は、昔から工程ごと別の職人や会社が担当する“分業制”で漆器を製造してきました。その中のひとつに「木地(きじ)」を作る工程があります。木地とは、漆を塗る前の白木のままの木材や器のことを指します。 今回は木地のなかでも、「角物(かくもの)」と呼ばれる重箱や小箱などの四角い木地を製造している有限会社井上徳木工の代表、井上 孝之(いのうえ たかゆき)さんにお話を伺いました。井

たったひとりのスピーカー製造メーカー 理想の音を追い求めて マール・サウンドシステムズ 斉藤マールさん

コンサートや舞台で欠かせない機材のひとつ「スピーカー」。そのスピーカーをなんとたった1人で製造している方がいると聞きつけ、福井県越前市を訪れました。マール・サウンドシステムズの斉藤マールさんは、コンサートやイベントのPAエンジニア*として活動しながら、スピーカーの製造を行なっています。 一般的に、PAが使うスピーカーは、スピーカー製造会社が製造しており、スピーカーを「作る人」と「使う人」が異なります。しかし、斉藤さんはどちらもご自身で行っており、“自分で製造したスピーカーを

私の手でグラスがもっとかわいくなる 世界に10人しかいない平切子の世界に飛び込んだ 椎名切子 石川 美幸さん

ものづくり新聞は、東京都江東区の椎名切子(GLASS-LAB株式会社)さんを訪れました。椎名切子は、1950年に椎名 三男(しいな みつお)さんが同地で創業した「椎名硝子加工所」の流れを汲み、三男さんの孫にあたる椎名 隆行(たかゆき)さんが2014年に創業したガラス加工専門店です。主に、平切子(ひらきりこ)、砂切子(すなきりこ)、カスタマイズグラスなどの企画・制作・販売を行っています。 平切子とは? 砂切子とは? 隆行さんの父・康夫さんは平切子、弟・康之さんはサンドブラ

はんこと根付、2つの技を持つ職人 峰月堂 山鹿 寿信さん

閑静な清澄庭園のほとり、東京メトロ清澄白河駅からほど近い場所に店を構えるのは、「峰月堂(ほうげつどう)」です。 ものづくり新聞オフィスのご近所さんでもあり、会社のゴム印を峰月堂さんに依頼したことがきっかけで今回の取材が実現しました。お話を伺ったのは峰月堂の店主、山鹿 寿信(やまが ひさのぶ)さんです。 はんことは? はんこは印章(いんしょう)とも呼ばれています。木や竹、金属、樹脂などの素材の一面に文字やシンボルを彫刻したものです。その面にインクをつけ紙などに押しつけると紙

偶然が生んだ製法?100年の歴史の中でピンチを救った看板商品 ひざつき製菓株式会社(後編)

今回のものづくりインタビューは、栃木県栃木市城内町にあるひざつき製菓株式会社です。『「美味しい」の裏側で挑み続ける。その美味しさの秘密とは? ひざつき製菓株式会社(前編)』では、工場潜入レポートと製造部長 谷島さんのインタビューで美味しい米菓づくりの秘密に迫りました。 後編では、ひざつき製菓4代目で営業部門の部長、膝附 宥太(ひざつき ゆうた)さんにひざつき製菓の歴史と今後についてお聞きしました。 ーー来年で創業100年ということですが、その歴史の中で時代の変化に合わせて変

「美味しい」の裏側で挑み続ける。その美味しさの秘密とは? ひざつき製菓株式会社(前編)

今回のものづくりインタビューは、栃木県栃木市城内町にあるひざつき製菓株式会社です。ひざつき製菓は主にせんべいなどの米菓の製造・販売を行なっています。また、株式会社武平作(ぶへいさく)という関連会社では栃木県内で販売するお団子など生菓子の製造・販売を行なっています。 ひざつき製菓のおせんべいひざつき製菓は自社企画商品の製造販売とPB(プライベートブランド)やOEMといった小売店や卸売業者などの企画による商品の製造販売の大きく2つの事業があります。 自社企画商品の代表は『城壁

システムエンジニアから鋳造の道へ 新たな「吹き分け」を研究 般若鋳造所 般若雄治さん

今回編集部が訪れたのは富山県高岡市です。富山県の北西部に位置する高岡市は、市内の西側には山があり、北東側には富山湾が広がる自然に恵まれた地域です。市内には高岡大仏や金屋町の街並みなど歴史深い場所でもあります。ものづくりの観点から見ると、伝統工芸の高岡銅器に代表される鋳物(いもの)の生産が盛んな地域です。 高岡銅器とは 銅器とは、その名の通り銅を材料とする器具や道具のこと指します。鍋や釜などの容器以外にも、仏具、農具、火鉢、銅像なども含めて銅器と表すことがあり、高岡市で作ら

厳しい現実を受け入れ、紙屋に何ができるか考えた 紙100%の『ホントの紙ねんどつくるキット』株式会社相馬 久保田 明男さん

2022年7月に開催された「第18回ライフスタイルWeek夏」で興味深いブースを見つけました。そのブースに掲げてあったのは『ホントの紙ねんど』という文字です。子供の頃に紙粘土を使って遊んでいた記憶が蘇りました。 一般的な紙粘土、実は紙が入っていない!? ブースに立ち寄り話を聞くと、実は一般的に市販されている紙粘土の主な原料は炭酸カルシウムで、ほとんど『紙』が入っていないんだとか!『ホントの紙ねんどつくるキット』は『紙(パルプ)』100%で作った紙ねんど、だから『ホント』な

3Dフードプリンタを活用して、いつでもどこでも誰でも食を楽しめる世界を作りたい Byte Bites株式会社 若杉 亮介さん

編集部は東京都新宿区新大久保を訪れました。向かったのはJR新大久保駅直結のビルにある施設、その名も「Kimchi, Durian, Cardamom,,,(キムチ,ドリアン,カルダモン,,,)」です。 名前を見るとどんな場所だろうと不思議に思います。中に入ると綺麗で洗練された空間が広がっていました。こちらは「新しい食文化」と「食を通じた新しいライフスタイル」をテーマにした食の交流施設です。 今回インタビューさせていただいたByte Bites(バイト バイツ)株式会社はこ

幼少期に描いた作品と再会してひらめいた 思い出を飾って残せるポケットフレーム 渡邉製本株式会社 河合枝里子さん

東京都荒川区東日暮里にある渡邉製本株式会社を訪ねました。荒川区は印刷業が盛んな町で、渡邉製本の会社周辺には印刷関連の町工場が軒を連ねています。 渡邉製本は昭和21年(1946年)の創業以来75年以上、機械加工と手加工による製本業を営んでいます。 今回は自社製品プロジェクト担当の河合 枝里子(かわい えりこ)さんにお話を伺いました。河合さんは渡邉製本を営むご両親のもとに生まれ、現在は家業にて自社製品開発や広報を担当されています。 ーーお生まれは現在工場がある荒川区周辺です

刺繍は糸の運びで表情が変わる 刺繍の個性が光る製品作りがしたい 株式会社ユーエス 内田公祐さん

針を使って糸を縫い付ける『刺繍』は服や帽子に施されることもあり、私たちの身近なものです。趣味として刺繍を楽しまれている方も多くいらっしゃいます。今回ものづくり新聞が注目したのは町工場としての『刺繍』の仕事です。 東京都八王子市にある株式会社ユーエスさんを訪ねました。ユーエスは主に法人向けの刺繍メーカーとして、制服やユニフォームへのロゴや名前の刺繍、ワッペン作成・取り付けや縁取り加工などを行っています。また、個人向けにオリジナル刺繍製品の販売も行っています。 今回は取締役の

ブランディングとはものづくり 町工場の規模のまま世界と戦いたい 藤田金属株式会社 藤田 盛一郎さん

大阪府八尾市に降り立った編集部は、突然巨大な白いフライパンに遭遇しました。 この巨大フライパンがあるのは、昭和26年(1951年)の創業以来、フライパン、アルミタンブラー、アルミ急須など金属製のキッチン用品や家庭用品などを製造している藤田金属株式会社さんです。2021年に新しくしたばかりだという黒い外壁の建物は奥が工場、右が事務所です。 こちらは、フライパン製造に使われる金属板を油通ししている様子です。藤田金属の従業員は19名(2022年5月時点)で、平均年齢は35歳です